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狂い狂わせ狂われた
親鳥の決断1



「――――どのぐらいの規模だ?」

文を見ながら俺は小十郎と成実に問うた。

文の中身は、城下町付近の状況。

「確認した限りではそう大きなものではありません。しかし手際がすばやく、只の山賊共ではないことは確か。兵の者が現場へたどり着いた頃にはすでに姿をくらましているのがほとんど。被害としては外回りから段々と内側に染み広がっております」

それは最近、ここいらを荒らす山賊だ。

拠点ともいえる山を割り当てれば討伐は簡単になるが、忍さえもを騙すそのやり方、金目のものを盗むことを目的とし、邪魔する者のみ殺して去っていくその手際の良さ。

――――こりゃあ、まるで"忍"紛いの賊だ。

いや、忍を撒くほどとなればその山賊等は"忍"といってもいいだろう。

そして被害の広がり方。

四方八方から攻め入るかのごとく。


おそらくその山賊達は、世間で言う私利私欲のために村一つさえ滅ぼさんとするような"山賊"ではないだろう。

「・・・黒脛巾組は?」

「殺された民を調べたところ一寸も違わずに急所に入っている他、毒が塗ってあったとおもわれる傷口もあった、と」

「襲撃の仕方も、襲われるまでだあれも気付かなかったらしいよ。なんていうかもうここまでくると"忍"としか思えないよね」

「Well said(同感だ)。そいつらが"野犬"なのか、それとも"狩り"にきた飼い犬なのか。そこが気になるところだな」

そうは言うが、野犬という可能性は低い。

そのまま捉えるならば"狩り"にきた飼い犬だろう。

そう考えると城主であるこの俺をおびき出す作戦―――。

「明らか、"餌"を撒き散らしてるだけだと思うけどね」

「小十郎も同意いたします」

「OK。城下町に見張りの兵を配備、黒脛巾組はあたりの山々の捜索とそいつらを裏で操っている奴らの情報収集だ」

「御意に」
「御意」

小十郎と成実がそれぞれ頭をたれる。




そこへ「失礼します」と綱元の声。


「綱元か、入れ」

そう一言告げると、静かに障子が開き頭をたれる綱元。

そして綱元の口からは珍しく不安の感情が読み取れる言葉が放たれた。

「つかさの姿が見当たらないのですが、ご存知ありませんか?」

「・・・自分の部屋にいるんじゃ、」

「見当たらないのです」


その言葉にその場の誰もが固まった。

綱元がそんなしょうもない嘘をつくわけが無く、そのはっきりとした言葉は俺たちの奥深くへと突き刺さる。

つかさが、いない?

口はただ開くだけで言葉が何も出ない。

「こちらへ来る前に忍に探させたのですが・・・何処にも」

いなかった。そう首を振る。


―――ついさっきまで一緒にいたというのにあの短い時間で姿を消した。

神隠しにでもあってしまったかのようだ。

梵、という成実の声に気を取り戻し、つかさが今もっとも行きそうな場所を思いつく。

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