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狂い狂わせ狂われた
雛鳥は跳ねて、5



「政宗様、先程の文の件について参られました」

障子の向こうから片倉さんの声。

荒れた髪を手串で治し始める政宗さまはちょっと寂しそうな笑顔で言った。

「――後でつかさの部屋に行くから大人しくまってろよ?」

整え終わった政宗さまは最期にさっきのとは違って優しく一撫でしてから片倉さんを中に招き入れる。

そして俺は片倉さんに軽く挨拶をして縁側へと出て行った。

「・・・・・・へへ・・・」

一人で笑っちゃうのも変だが、政宗さまに抱っこされて抱きしめられて頭をなでられて、といい事だらけでついついにやけてしまう。

そんな俺の心情を感じたのか、庭にはさっきの白い猫が嬉しそうに尻尾を振って歩いていた。

嬉しいことでもあったの?と言いたげに「にゃぁお」と鳴くその猫。

上機嫌な俺は猫を触りたくなって草履をはかないまま庭へと降りて猫のところへと向かった。




―――だが、五歩手前までくると軽い足取りで距離を開け始める猫。

ある程度距離をとるとこっちへと顔を向けて「にゃあ」と鳴く。

遊ぼう!といっている気がして俺は零れるぐらいの笑みを浮かべて猫の後を追っかけた。






「にゃん」


「ニャン」


「にゃー」


「ニャー」



どのぐらい歩いたか。


猫が鳴くたびに真似して鳴いて歩いて、たまには茂みの中に入ってみたり、穴の開いた壁をくぐったりしていた気がする。

今は、相変わらず絶妙な距離感を保ちながら生い茂った森のようなところを歩いていた。

「ニャ―――ァオ」

ついつい面白くて怒った猫の鳴きまねをするとよほど似ていたのか白い猫は毛並みを逆立てて逃げていってしまった。

その様子にケラケラ笑いながらも白い猫のあとを追おうとした。




「―――――あ、れ?」

そこでまずいことに俺は気付いてしまった。

血の気が引いていく俺を馬鹿にするように何処かでカラスが鳴いていた。






政宗さま、片倉さん、綱元さん、しげ、ごめんなさい。


俺、どうやら城の外にでたあげく、迷子になっちゃったみたいです。



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あきゅろす。
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