城下町。 つまり城の外に出れる! 胡坐をかいている政宗さまの上でついつい嬉しくて跳ねてしまう。 だって、城下町だよ? きっといろんな人がいて、いろんなおやつがあって、楽しいんだろうな。 「やったああ!政宗さま、頑張ってね!」 「ああ。・・・とそれより文をいい加減に渡せ。つうか、またぐしゃぐしゃじゃねえか」 「あ。・・・あはは」 手に持っている文の事を忘れてて、すっかり握りつぶされたそれはぐしゃぐしゃに皺を作っていた。 政宗さまも毎度の事となったこれに対しすでに怒る気がなく、長い溜息を吐いて文をひらき読み始めた。 「・・・・・・。」 「・・・。」 俺からみればまだまだ全然、達筆なその文字が読めない。 それをやすやすと読める政宗さまは凄いなあ、と感心したまま待っていた。 「――――・・・・・・sorryつかさ。城下町、もうちょっと後でもいいか?」 さっきとうって変わって落ちる声。 俺も口が笑顔から次第にへの文字と変わってしまった。 「・・・・・・急なこと?」 「ああ・・・。つかさと城下町に行く前にやらなきゃいけない事だ」 悪い。 そう二回目の謝罪を口にして政宗さまは俺を軽く抱きしめた。 政宗さま特有の良い匂いに心が安らいだ。 「―――平気。それが終わるまでしげと遊んでるから!」 別に一年まて、とか一生待てだとかそんな事を言ってるわけじゃない。 "もうちょっと後"な訳だからそんなにかからないが、それなりの重要なことなんだろう。 政宗さまの頼みなんだ、きかないわけにはいかない! 「ありがとな、つかさ」 「へっへっへー、お安い御用」 政宗さまは好きだからきっと言うことは何でも聞いちゃうだろうな。 胸を張って答えると「このやろ〜」と凄く嬉しそうに頭を乱暴になでまわす。 「ぅきゃ―――っ」 しげもよく同じようにぐしゃぐしゃにするんだけど、しげのと違ってこうやられてると眠たくなってきたりする。 きっと、政宗さまに髪をいじられるのが好きなんだなーって。 きゃー、と女の子みたいに声をあげて薄目を開けた。 ――――ドキリ、と心臓が止まりそうになった。 「―――・・・どした」 俺の動きが止まって不審に思った政宗さまが声をかけてくる。 そのときにはもう、視界にうつった"何か"はいなくて、心臓だけがバクバクと鳴り続けていた。 「―――んー・・・、こう撫で回され続けるといつか禿げそうだなって」 強く撫で回されて、抜けた毛が政宗さまの着物についているのを発見して、摘み上げた。 視界にうつった"何か"には驚いたが、もうそこには何もいないから言う必要はないだろう。 その言葉に、鼻で笑い返す政宗さま。 「――つかさが禿げたって俺はつかさが好きだぜ?」 「へへー、俺だって政宗さまが禿げても好きですよ!」 「――つかさ!」 「――政宗さま!」 互いに再び抱きしめあう。 こんな、一時が幸せだ。 こんな幸せな時間が、暮らしがとても大好き。 [*前へ][次へ#] |