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狂い狂わせ狂われた
雛鳥は跳ねて、3




綱元さんに文を渡す仕事を任された。

政宗さまは奥州の国の一番偉い人なので、多忙で中々会えないが、会うたびに何処か惹かれてしまう。

その片目に秘められた強さか、あるいは普通の人とは違う雰囲気にか。

こればかりはどれだけ考えても納得のいく答えが出ない。

結果、ついには考えるのがめんどうになりやめてしまった。

縁側をテンポを取りながら歩く。

すると足元にヒョロリと何かが割って入ってきて踏みそうになってしまう。

なんだ?と下を向くと白い猫が尻尾を振りながら「にゃー」と行く道を塞ぐように座っていた。

野良猫なのだろうが、その白い毛は汚れなどなく綺麗で緑の眼が俺をじっと見ていた。

「ちょ、可愛いー!」

その場に座り込みなでた。

警戒心もなくて頭をなでると嬉しそうにゴロゴロと喉を鳴らす。尻尾もフリフリ振っていて可愛い。

「君、どこからきたの?」

「にゃー」

「・・・ごめん、わかんない」

猫とはなす場面を見られたら恥ずかしいな、と思いながらもついつい話しかけてしまう俺は、当たり前ながらに言葉などわかるはずがないというのに首をかしげて困った仕草をしてしまう。

「にゃう」

「あ、」

撫でられた事に満足したのか猫は庭に飛んでそのまま華麗に塀へと飛び乗り城の外へといってしまった。

俺としては全然満足してなくて、塀の向こうの猫が見えないことが不安で仕方ない。

いじけたように口を尖らせて塀を睨んでると手元から文が落ちて慌てて拾う。

政宗さまの顔が浮かんだ。

「―――、仕方ない!政宗さまに早く届けちゃおう」


塀の外を一瞥してその場を去る。


向こうではまだ、猫が俺を呼ぶようにニャアニャアないていた。





―――政宗さまの執務室。

「政宗さま。文を持ってきました」

そう片倉さんに習ったとおりに障子越しに声をかけると「come on!」と英語でかえってきた。

中に入ると、筆を置き俺に向かって大きく両手を広げる姿。

"おいで"と表現する政宗さまが嬉しくてそのままのめりこむように飛び込んだ。

「政宗さま!」

「つかさ、元気か?」

「元気だよ。政宗さま、執務はどうですか?」

「もうちょいで終わる。終わったら俺と城下町へいこう」

「!」



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