胸を締め付ける痛みが、抑えきれない。 それでも抑えようと抑えようと胸板を爪で引っかいた。 引っかいて引っかいて引っかいて引っかいて皮膚が赤くなって、皮が傷ついて血がにじむ。 それでも、この胸の痛みが止まらない。 どうすればこの痛みが止まるのか知らない。 わからない―――。 それどころか、止めることさえもできずにただ、何度も何度も男女二人組みの――――両親の―俺を全否定する言葉ばかりがループしていく。 何度もその言葉に傷つけられそれでも"親"だからずっとずっと耐えてきた俺。 映像のたどり着く先にあるのはおかしくなった自分。 それでまた映像が最初にもどってずっとずっと繰り返す。 止まらない。 止まらない。 止まらない――― 誰か、助けて。 頭痛が大波になって襲う。 今にも消え去りそうな正気で部屋の障子を開けて外へと、できれば片倉さんのいる部屋へと行かなければ。 きっとこの正気がなくなったら、"戻れない"気がするんだ――。 「片倉さ・・・っ」 いよいよ正気ではいられなくなって。 思考の隅っこに残る最後の正気も満月を背景に庭から覗く男女の二人組みを、両親を視て―――消えていった。 「い、やだ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だああああああ!!!!」 子供が駄々をこねる、だなんてほどの叫びじゃあない。今にも喉が裂けてしまうのではないかというほどの掠れた声を吐き出していた。 頭を抱えてうずくまる。 遠くで俺の名前を呼ぶ声がしたけれど。 それに縋る事無く、深い闇の淵に沈んでいった――――。 [*前へ][次へ#] |