「おじゃましまーす」
「あっお前俺の足踏むなよ」
「いたたたたテメェも踏んでんだよ!」
「狭いからはよ上がれやァァァァ」
「やべぇ炭酸すっげ振っちゃったよオイ」
「ペプシ?コーラ?」
「うわっお前何それ馬鹿じゃねぇ!」
「重い重い」
「は?えっ38巻全部!?嘘だろ馬鹿だろ」
「ドラゴンボールもある!」
「遊戯王と合わせて・・・80とか・・・」
「近所迷惑だろ早く上がれやァァァァァ」






パーティー!

(土沖がすごくリア充です)(Z組設定)(クリスマス)
(※露骨表現注意)






土方は部屋の隅でこっそり溜息をした。

辺りを見渡せば、もうクラスメイト達がハイテンションに飲み食いをしている。机にびっしり並べられたフライドチキンやハンバーガーも、無くなりそうな勢いだった。真ん中に置かれたポテトの山は、まだまだ無くなりそうになかったが。


今日は12月24日だ。

クリスマスの前日、クラスメイトに携帯のメールが一斉送信された。内容は、
『一人なZ組の皆、先生のマンションに集まれ!』
とのことだった。
クラスの女子達が、先生を押しに押してマンションでパーティーをさせてくれることをOKさせたらしい。親の都合で行けないメンバーを抜いて、ギリ入れるくらいの人数が集まり、今日パーティーが開かれている、ということだった。
銀八の家はそれなりに広く、10数人集まったZ組の輩が部屋に収まっていた。そんな銀八は苦々しい顔で、―それでも、満更でもない様な微妙な表情を時たま見せ―うるさい連中を静めることに躍起になっている。

「(いやこれはマジでうるせェ)」

最初は銀八ざまみろなんて思っていたが、さすがに同情してしまう。中には誰かが持ってきた遊戯王だかドラゴンボールだかの漫画に夢中になっている人がいたり、とんだバラバラなクラスだった。愉快で結構なことだが。
土方は片手に持っていた紙コップに口を付けた。ああ、ペプシか。俺はコーラ派なのに、なんて思いながら。

「ちょっとォォォ誰ですか!お酒持ってきたの!」

「あれっ、それジュースじゃなかったの」

「オイィィィ回収ゥゥゥゥ」

誰かが銀八の冷蔵庫から勝手に拝借してきたらしい。チューハイが配られそれを阻止しようと、一応教師な銀八が慌てて一つずつ紙コップを取り上げていた。さらに騒がしくなった部屋を見て、今度こそ土方は盛大に溜息。何だこれ。本当に苦情来んぞお前ら!

すでにぬるくなったペプシを口にしながら土方はぼんやりと目を半眼にする。

・・・何だか急に煙草が吸いたくなってきた。
静かな夜外に出て、一人ゆっくり一服したい。
けれども眠気も相成って、どうも動く気がしない。ちびちび炭酸の刺激で気を紛らわし、どうしようかと一人悩み始めた。何だか、セックスした後、本当は喉が渇いて仕方がないのに、それでも、身体がだるくて起き上がれず、けれども喉は乾いていて・・・と繰り返す気分と似ている。

「・・・・・・」

何考えてんだ俺。
馬鹿馬鹿しい考えをした自分に呆れ、土方はだらりと壁に寄り掛かった。ずるずるそのまま眠ってしまいたい・・・。




「土方さん」



くぃくぃと前髪をひっぱられる感覚がして、土方はばちりと目を開けた。

「っ!?」

「あ、起きた 眠ってましたぜ」

「えっマジ」

ふるり、首を振り土方は目の前の彼を眺めた。沖田だった。すぐ近くに沖田がいた。

「何お前・・・漫画読み終わったの」

「ううん。今度貸してもらう約束してきました」

「そ」

くしゃくしゃ頭をかきながら、土方は体制を整える。眠っていたのは数分だったらしい。変わらず皆は暴れていた。
そこで土方は目をぱちくりとする。・・・何だこれ。

「・・・近くね」

「えっそうですかィ」

土方の隣にぴったり寄り添り、沖田は目を丸くする。これが普通ですとでも言いたそうに、さらに身体を密着させてきた。

「オイオイ、・・・分かってんのかよ、今日は一人の皆が集まるパーティーだぞ」

「へぃ、分かってるつもりでさァ」

沖田はにやり、土方に嗤いかけた。
それを見てげんなり。

二人は付き合っていた。
本当は一人身ではないのに、楽しそうだからといった理由で沖田が参加をした。そんな沖田に誘われ、若干微妙な気持ちになりながらも、土方も参加をしたという訳だった。

待ち合わせ場所に二人が付くと、山崎から「お前ら一人じゃねェだろ」的な目で見られたが、関係ない。特に皆にはバレていない筈だし、気軽に参加をしてしまった。

「そんなくっ付いたら意味ねェだろ・・・ってか、バレるぞ」

こそこそ小声で土方は沖田に話しかける。聞いているのかいないのか、それを無視し沖田は土方に顔を近づけた。

「っ!?」

「ね、土方さん。本当はすごく煙草吸いたいんでしょう?抜けやしょうぜ」

「えぇー・・・」

「もう十分パーティーは楽しみやした。ちょっと外行きやしょうぜー」

「きっ」

却下!と言い出す手前で沖田がいきなり立ち上がった。ちゃっかり土方の手を掴み、皆に一言。

「ちょっと抜けまさー」

「オイオイオイオイ」

普通こっそり抜けるもんじゃね!?と思いつつ、けれど、逆にこっそり抜けたら怪しまれるか、と考え直し沖田に付いていく。

「おー抜けろ抜けろ」

「場所空いた!ここ座ろ九ちゃん」

「もういっそ帰れー(笑)」

はいはい、と沖田は軽くかわし堂々と銀八の家から出て行った。小さな手に引かれ、土方はコイツすげェと呆れるのであった。




コートを着、靴を履いてマンションの近く、空き地の傍に目立たない場所を見つけそこで土方はライターを点けた。
思い切り吸い込み肺を煙でいっぱいにする。・・・美味い。

「っあ゙ぁぁぁああ」

「あっははそんなに吸いたかったんですかぃ?」

「すっげ美味ェ、総悟、ありがとな」

「いえいえー」

しゃがみこみ土方を見上げ、沖田は嬉しそうににっこり笑った。土方は立っているため、自然とこちらを見上げる沖田にどきりとした。絶対に言ってやらないが。

「ねェ土方さん。もう帰っちゃいやしょうか」

「あ?何だそれ。お前がパーティー行きたいって言い出したんだろ」

「うん・・・でもねェ」

視線を逸らし、沖田は足元を見つめる。何だ?と思いつつ土方は沖田の真正面に座った。

「そーうご」

「うーん、俺らって、結構、イベントとかどうでもいい感じじゃないですか」

「ん?まぁ。」

「花火大会とか、別に二人で行かなかったですし」

「そうだな」

夏のことだ。
付き合ってすぐ、近所で花火大会が行われたが、普通に剣道部仲間数人で行ってしまったことを思い出した。

「いや、それは良いんでぃ。俺だって、土方さんと二人がいいーなんて思わなかったし」

「うん」

「今までと、同じでいいって。普通でも、十分・・・え・・・と・・・幸せ・・・?だって」

「・・・」

土方は携帯用の灰皿に煙草を押さえつけ、火を消した。沖田の話を聞き続ける。

「今日、皆がすごいテンション高くて、見てるだけで俺すごい楽しかったんでさァ。漫画読みながら変な事しゃべってる奴らと絡んだり、して、楽しかったです」

「うん。俺も嫌いじゃないぜ。ちょっとうるさかったがな」

「ふふ、そして、何か、満足してきちゃって」

「うん」

「そしたら」

「・・・・・・」

沖田がこちらを向き、ゆっくり抱きついてきた。土方の首に手を回し、座った格好で抱き締めあう。少し辛い体勢だったが、離れたいとは思わない。

「そしたら、土方さんとは?って思っちゃって」

「うん」

「楽しい気持ちは満たされたんですけど、えぇと・・・どきどき、したり、そういう、気持ち、は、味わえてないなって、」

「・・・・・・」

土方は顔が強張っていくのを感じた。口角がひきつる。口を一直線に結び、じわじわ顔に熱が上がっていくのを感じた。

「ねぇ、土方さん。イベントに気合入れる女嫌いって言ってませんでしたっけ」

「・・・まぁ」

「・・・嫌いになる?」

ぶつんと何かが切れる音がし、土方は思い切り沖田を抱き締めた。体勢が崩れ、沖田は地べたに座り込む形になる。

「お、お前は、気合なんて入れてねェだろ」

「う・・・」

「純粋に楽しみたいって思うだけだろ」

「・・・うん」

「嫌いになるかよ、」

ぎゅうぎゅう抱き締め互いの体温を確かめ合う。頬に冷たく風は刺さるけれど、沖田と触れ合った箇所はとても暖かかった。

「土方さん、帰ろ」

「おう」

「土方さん」

「何?」

「ラブホ行きたい・・・」

「〜・・・っ」

おっまえは!と土方は声を張り上げ沖田を引き剥がす。見たら沖田の顔は真っ赤で、涙さえ浮かんでいて、もうどうしようもない気分になった。

「あー、あっちぃぃ」

「き、奇遇ですねィ俺も暑いでさァ」

「・・・行くぞ、おら」


立ち上がり片手を差し出した。
沖田は顔を真っ赤にさせたまま、笑う。




手を握り締め、二人はイブの夜道を歩くのだった。






***
うわリア充を目指しまくったら本当にリア充になった^^^^^^
パーティモノが書きたくて、どうしてもペプシと漫画を誰かに持ち込ませたくて、最初詰め込みました。遊戯王にしたのは叶の趣味です(ドラゴンボールはなんとなく
どうせならクリスマスパーティーをと思いこんな話が出来上がりました。


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