(後輩土方×先輩沖田)






「金貸して」

「いや、何回目だと思ってんすか・・・」







リップ音








すごく男前な新人が入社してきた。

女子社員はきゃあきゃあと黄色い声をあげていて、正直うざかったが気にしないフリ。
そんなことに気を取られていたら人生やっていけない。どこへ言っても女はいるものだから。

でも、珍しく、沖田はその女子社員の意見に賛成していた。本当に、その新人はかっこいいのだ。
黒髪でスーツがぴしりと似合っていて。切れ目で鋭くちょっと目つきは悪いかもしれないけれど。

どきりとした。

おいおい男が男にときめいてどうするよと最初は思ったがでも、高鳴るこの気持ちを抑えられない。
気が付いたらその新人の側にいたいがために、何かと理由をつけて付きまとう。
どうしようか。もはや病気かもしれない。

その新人の名を、土方と言う。



「一万。五千でもいいから貸して」
「いや、何ですかマジで。昨日も同じセリフ言わなかったっすか」
「先輩に対していい度胸してるねぃ」
「さすがに何回も来られると誰でもそうなりますよ」

律儀な彼にきゅんとなる。
誰でも?他の人、例えば山崎とかなら何も文句言わずに貸してくれる。顔は不満そうだが声には出さない。それほど山崎は気弱いのだ。
なのにこの土方は気をしっかり持っている。

「ねえ本当。今度、いや、来週返すから」
「・・・本当っすね」
「へいへいありがと!」

五千円でもいいと言ったのにちゃんと一万貸してくれた。律儀!
札を受け取るときにちょこっと手が触れ合ってどきりとする。
それだけで嬉しい。こんな俺はきっとキモチワルイだろうな・・・。
沖田は後ろ向きな考えを持ちながら、でも、浮かれていた。


「はは、先輩もっと笑うといいのに。俺知ってますよ。以外と他の人にはそっけないでしょ」
「え」

口元を上げて、ゆるりと流し目で。
土方は頬杖をつき沖田に言った。

「俺くらいじゃないすか。人と一緒にいて笑うの」


・・・え。

どきどき鳴る。左胸が苦しい。沖田はびっくりした。
見てくれてた?俺のこと。少しでも。

かあっと顔が赤くなるのを隠して反発した。

「うるさいっ!」
「照れてます?っつーか先輩って以外と顔可愛いですよね」
「からかうなアホ!」


ずんずんと逃げるようにオフィスから出た。
まだ熱い。顔も、手も、身体も。



新人の彼は知っているだろうか?
金を借りるのはフリで、ただ単に、近付きたいだけだってこと。
こんなにも、好きだって心が叫んでること、知っている?
知らないだろうと思い直し、沖田は熱くため息をついた。

年下なのに好きになってしまった罪悪感がまだ彼を付きまとう。


「先輩?」
「わっ!」

追いかけて来たらしい。
土方がいた。すぐ後ろ。
幸い後ろを向いているので顔を見られていなかった。
・・・こんな情けない顔を見られたら、沖田はきっとショックで寝込んでしまうだろう。

「何」
「機嫌直してくださいよ。謝りますから」
「そん、な、やれやれって感じで、言うな・・・!」
「は?」

あきられている。
きっとこんなヘンな先輩を持って嫌なんだろうな
迷惑なんだろうな。
嫌いなんだろうな。

「っ」
「泣いてる・・・?」
「泣いてなんかっ」



ふわり、と。



腕が回された。
すっぽりと誰かに身体ごと包まれる。
誰かに。誰に?だってここにいるのは、土方しかいない。

「え?」
「泣くな」

沖田の左肩に土方の顔。
後ろから抱きしめられていた。

「何、え、ひじっ」
「ごめん、謝る」

いつもの敬語じゃなくてどきり。
沖田は戸惑う。どうして?

「だって、ひじ、かたは、俺のこと嫌いで」
「何でそんなこと・・・逆。好きだし」
「―!」
「可愛いし、髪の毛だって綺麗だし、外見だけじゃなくて人の目気にして笑えないとか可愛すぎ」
「え、ええ」
「でも俺には笑いかけてくれるよな。それすっげぇ嬉しかった」
「う、」
「好きだよ」




横を向いたら、唇に唇が当たって。
叶わない恋だって諦めてた分、愛しさが込みあがってきた。

「おれも、す、きっ」
「分かってる。分かりやすいもんな」
「うるさっ・・・ふ、」




離れたらリップ音がした。






***
終わり方が微妙なのはこの際もうww
リーマンリーマン!(萌!
ああ、私は最近おかしいようです。前は年下×年上なんてだいきらいだったのに。
自ら書いちゃうなんて。平気なんて。成長したかな(笑


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!