「好きだ総悟」


「・・・・・・。」







感覚吐息








沖田は困っていた。

彼の眉にはめずらしくしわが寄っていて(と言ってもほんの少しだが)、丸く大きな目が少し細められている。
沖田の感情がここまで顔に現れるのもそうないだろう。困ることすらめったにないのだ。


そんな表情をさせているのはただ一人、鬼の副長、土方だった。


「総悟」

「っ、・・・・・・。」

首元に土方の息がかかり、沖田は思わず反応してしまいそうになる。ぴくりと頬がわずかに動いたが、肩が跳ねるなどという情けない行動は何とか止めることができた。

ああ本当に情けない。心臓だけでなく、身体も跳ねさせる気かこの副長は。

心の中で沖田は不満を並べる。
もしも沖田の表情に気付いていたなら、土方は何かしら謝罪の一言でも口にしただろう。しかし本人はまったく気が付いていない。何故なら、

後ろから羽交い絞めにするように、抱きしめていたのだ。


「ん」

「・・・!」

もぞり、と土方が後ろで動く。黒い髪が首元をくすぐり、口から変な声が出そうになった。
だいたい何だこの体制は。
例えるならお父さんの胡坐の上に座っている子供のようだ。土方と比べだいぶ華奢な沖田はすっぽり収まってしまう。温かな副長室で行われるそれは、ほのぼのとしていて何とも和やかであった。

「(第三者から見ればな!)」

どどど、といつも以上に血液を身体全体に送りつけている心臓が憎い。暑くて暑くてたまらないじゃないか。

「はー、好きだ」

「・・・」

どっ、と一瞬止まった気がした。脳も心臓も、そう何もかも。おかしいのではないだろうか、もちろん土方が。こんなに愛をささやくなんて、土方らしくない。

「? 何か言えよ」

「ひっぁ!」

「!?」

あ、しまった!
沖田は思わず甲高い声が出てしまった口を押さえつける。恥ずかしい!それだけが脳を占める。何て声を出してしまったのだ。だいたい土方がいけないのだ。

反応が無かった沖田を不思議に思い、首筋をつっと撫でたから。

「わ、悪ぃ、くすぐったかったよな」

「ぅ、」

ぞくぞくとした感覚が体中を走った、何、こんなの知らない、こわい。

「泣くなよ、」

「泣いてやせん」

「良かった」

少し涙目になっただけで、泣いてなんかいないのに、土方は心配そうに後ろから沖田を慰めた。なでなで、丸い頭の形を確かめるように大きな掌を動かす。

「はぁ、もう、本当、心臓に悪いですから・・・」

「え」

「さっきから、態度が、三日前と違うじゃないですか」

「あぁ、それで黙ってたのかよ」

「・・・。」


三日前、沖田は土方に告白された。

「好きなんだけど」と言われて口の形が「は?」となった。それだけで土方は傷ついたらしい。うっとたじろぎ、下を向いた。そう、三日前の夕方の話だ。
本気だと知った沖田はまぁ、驚いた。女をとっかえひっかえしていたこの副長が、男である沖田に惚れると。なにそれ、冗談?そう思うのも無理はない。

しかし沖田のその後の返事は「付き合ってもいいですぜ」。

あるはずもない母性本能がくすぐられたというか何というか・・・。
とりあえず、悲しそうに俯く土方があまりに居た堪れなかった。



「(そして今)」

非番の沖田が土方の部屋に遊びに行くととたん、思い切り抱きしめられたのだ。
仕事が煮詰まっていたらしい。休憩させろと言われこのまま数分。
囁かれるわ、首筋を撫でられるわでさんざんである。

「だってよ、絶対フラれると思ってたんだぜ?夢かこれは・・・」

「だ、黙りまさァ。そりゃ、だって、アンタこんなにべたべたするタイプじゃないって、思ってましたから、」

「それで戸惑ってんのか?」

「まぁ・・・」

「へえ、そうかよ」

やけに嬉しそうにぎゅっとするもんだから、とうとう沖田は途方に暮れてしまう。いつまでこれは続くのか。
恋愛対象として見ていなかった土方に、あるはずもない感情が起き上がってしまいそうだ。

「あいしてる」

「はぁ、ん!」


耳元で囁かれ、とうとう肩は跳ねてしまった。







***
でろでろ土方にハマってんのか・・・?楽しいです
しかし総悟がかわいい。36巻あたりを読んでいたらたまらなくなって書いちゃいました。ちくしょうかわいいい、でもかっこいい。かっこいい総悟が土方の前でだけかわいくなるのがたまらない。肩幅広いとときめきます←
そんな男らしい外見してて、土方の前だと乙女なんだろうよ!かわいいな!(叶の意見失礼しました


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