沖田にはある変わった習慣がある。


「土方さん・・・んーちゅ」



毎朝、土方の生写真にキスをすること。





習慣







「へへ、土方さん」

沖田は甘えた声を出して布団に倒れ込んだ。語尾にはハートマークが確実に付いているだろう。顔を赤くして幸せそうに微笑む。普段鬼畜外道な沖田を見ている攘夷浪士らがもしもこの状態を目の前にすると、ぶっ倒れるんじゃないだろうか。

それくらい、今の沖田はおかしいくらいに可愛らしかった。


「土方さんは相変わらずイケメンですねぇ」

今にも鼻歌を歌いだしそうな調子で独り言を言う。沖田は写真にほっぺをすりすり。ついでにはーっと幸せそうに溜め息をついた。

「だいすき」

ちゅっと丁度土方の頬にあたる所にキスを落とす。一人でこんなことをして照れてしまいそうになるが、毎日のようにこの行為を繰り返しているのだ。もう慣れっこだった。

そんな沖田は夢中でそれに気付いていない。

廊下に響くのは大きな足音。


「オラァ朝だぞいい加減起きやがれェェェェェ!!」

「!!!?」

思い切り肩を跳ねあげがばりと振り向いた。反射的にその行動をしてしまい後悔する。あ、まて、しまった。そういえば、今日は朝のミーティングが三十分早いんだった。
もちろん、土方はねぼすけの沖田をいつもの三十分早く起こしに来る。

「ん?・・・あ?」

「あ、ああああああああああ」

しっかりばっちり手の中のそれを見られて沖田は絶叫。しまった本当にしまった!いつもなら写真といちゃいちゃ(笑)して、その後に二度寝をして、そして土方に起こしてもらうというスケジュールがちゃんとできていたのに、それなのに、今日はそれが三十分早いんだった!
土方の視線が写真を捕えた。・・・バレてしまった。


「何だそれ・・・俺の写真?」

「は、はわわっ」

つかつかと沖田の布団のそばまで土方は来て沖田の手の物を覗き込む。
もう駄目だ。どうしようか。ただでさえからっぽの頭がますますからっぽになる。何も考えられない!

「・・・。総悟、何で俺の写真持ってんだ?何してんだ、お前・・・」

「えっ、」

眉をひそめて土方は沖田に問う。えっ、えっ、どうしようか。何て言おう。何してるって、それは、そのう、おれ、毎朝土方さんとちゅーしてるんでさぁ。なんてそんなこと言えるはずがない、・・・どうしよう・・・!


「べっ!別に違、夜土方さんを呪うための道具でさァ」

「・・・ほう?」

「いやァ、昨日の夜、ついついカーンと」

「・・・カーンと?」

「久しぶりに上手に打てましたぜィ、釘が」

「ほうほう。昨日の夜寝ずにカンカン撃ち続けていた訳だな?そして起きられずいつまでも布団の上でゴロゴロしていたと?もしかして昨日の朝起きられなかったのもまったく同じ理由かァ?」

「・・・ば、ばれたァ」

「・・・・・・そうかよ・・・」

棒読みでとぼける沖田を見て土方の顔の影が濃くなる。眉は恐ろしいくらいに寄っていて、漂う空気はそう、鬼のよう。整った顔で笑いながら青筋を立てた。・・・怖い。


「アァ?それでまだゴロゴロゴロゴロするつもりかァ?確かに昨日言ったよなァ?三十分早いってよォミーティング」

「・・・・・・・・・。」

「五分で準備しろやテメェェェェエエエエエエエ!!!」


「わー・・・!」


土方はその低い声で大きく怒鳴り、ピシャリと障子を閉め出て行った。
それを見て沖田はひやりと背筋が凍るのを感じる。



ああ、しまった。

あんな言い訳、しなけりゃぁよかった・・・!





習慣
(俺のバカァァァァァアアア)





***
総悟に最後の台詞(?)を言わせたかったために出来ました。
それと初心に戻ろうかなって思って(笑
某笑顔動画で土方&沖田のまとめがあって、ひどく萌えた結果がこれです。最初の頃の二人は信じられないくらいかわいかった・・・!や、今でもかわいいですけれど!


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