※詐欺師土方×殺し屋沖田パロ
※長いです(P2)
※殺し屋沖田っていう設定が生かせていませんorz


※ひどい甘えろです(総悟喘ぎまくり)










「愛していますよ」




囁く。

触れる。

言葉巧みに。


落ちる。


下へ。




気付かない。




緩やかに



ゆっくりゆっくり、



落ちるから。







詐欺師と殺し屋







今日も仕事を終わらせた。


金持ちの頭が悪い令嬢に詰め寄り、愛の言葉を囁くだけで簡単に落ちてしまう。いつものことだった。

それを数ヶ月続け、絶対的な信頼を得る。
ゆっくり進むやり方に、令嬢も夢中だった。
下品な金持ちの息子と違い、気品漂う彼のやり方は美しい。すっかりその気になってしまい、秘密の言葉を漏らすのだ。

ぽろり、

一滴も逃さぬよう彼は記憶する。大抵一度しか言わないその数字の羅列を、その場で一瞬にして覚えるのだ。
それを彼はやってのけた。


次の朝には令嬢の親―・・・貴族が悲鳴を上げることになる。









キャアアアアア・・・


「クッ・・・」


お屋敷から聞こえた悲鳴を背後に、土方は歪な笑みを浮かべた。
仕事が終わったとたんに聞こえるとは思わなかったのだが、まあいい。
呆けて誰が犯人かなんて考える頭すらないだろう。


―まぁ、金庫の金と引き出しの宝石類が無くなってりゃ誰でも驚くわな。



呑気に考えながら、コツコツと夜の街に足音を響かせる。

土方は詐欺師だった。


今回のターゲットは今最も盛んな貴族の令嬢。その令嬢に愛の言葉を囁き、その気にさせ、金の管理を任せてもらう。

どうせ父上や母上は私が使うこれっぽっちのお金なんて、興味ないわ。二人で使いましょうよ。

そのような台詞を言わせる。
言わせるのだ。
自分から言うのでは怪しまれる。じわじわと金の方へ話を持っていき、令嬢から言うのを待つ。

絶対的な信頼を得た土方は大胆な行動に出る。
言葉巧みに、令嬢に金の在りかを聞き出す。将来を約束し、金庫のカギも教えてもらうのだ。


・・・全ては『全て』を奪うために。







我ながら卑怯な手だと思う。
それでも続けるには訳があった。

・・・それは。



「!」

「あっ!」


ガシャンと音がした。
隣のフェンスに何かがいる。身構え夜に慣れた目で見ると人だと分かった。
そいつがひょい、とフェンスと飛び越え土方の前に降り立つ。


「アンタですねぃ」

「・・・何がだ」


綺麗な男だった。

美しく光る蜜色の髪は月夜に生え、地に満月が落ちたのかと疑う。
土方と若干背は低いものの、確かに肩幅は広い。童顔な顔に騙されそうになるが、れっきとした成人男性だった。


「さっき聞こえたろぃ。きゃーって。あんただろ、やったの」

「・・・」


黙る。
ここで肯定すると厄介だ。警官には見えないが、確信を突くこの言葉。男を睨みつけて土方は警戒する。

「やでぃ、睨まねぇでくだせぇよぅ」

「・・・無理な相談だな」

「敵じゃないんで」

ひらひら手を振り緩い言葉を紡ぐ。
敵じゃないとはどういうことだ。仲間とでも言うつもりか?馬鹿な。ここらへんで土方以外の詐欺師がいるだなんて聞いたこともない。

「っていうか、俺は怒ってるんでさぁ。俺の仕事取りやがって!」

「は?」

ぷんぷんと効果音が付きそうな怒り方をする。とたんに幼く見え、本当に大人かこいつと土方は半眼になった。

「どういうことだ」

「俺も、貴族狙ってたんでさ」

「・・・」

さっきまでのふざけたような怒り方をやめ、男は真剣に土方を見つめる。



「俺は殺し屋でさぁ。貴族を潰す者」

「・・・、殺し屋、か、」


聞いたことはあった。今回の仕事場とは遠い所で、何件もの殺人事件があったのだ。
切り口からして特殊な刃物を使っているらしい。全て同じ犯人だ。
・・・その殺人者は、貴族ばかりを狙う。


「お前か。一週間前のアレ」

「へぃ。場所変えようとこっち来たばっかでさぁ。そして、貴族をさぁ狩ろうと思ったら悲鳴が聞こえやがった。アンタのせいでぃ」

ぷくりと頬を膨らませる。
だから、大人のやることではないだろう・・・。土方は殺人者の前だというのに、いつの間にか緊張を解いていた。それほど目の前の男からは殺気が感じられなかった。

「もう、これじゃぁ明日には警官だらけになるぜこの街。おちおち仕事にも行けねぇよぅ」

「それはすまなかったな」

「全然悪いって思ってないでしょう」

「だってこれが俺のやり方だし」


「・・・アンタ、有名ですぜ」


唐突に男が口にした。


「俺らのような影の者たちから見ると、アンタすごい有名でさぁ。どんな貴族からも金を巻き上げ貴族から蹴り落とすっていう」

「まぁ、貴族から平凡な一般人になった奴らなら何度も見たよ。泣くよなァ、そうなりゃ」

「ふふ、俺は泣く暇も与えませんがねぃ」


笑顔なのに影がある。
ぞっとするような笑みを浮かべる男は鬼のようだ。
いや、もうなっているのかもしれない。鬼に。

男を見て土方は口元を釣り上げた。・・・こいつが殺し屋だということは、嘘ではないらしい。

「俺は沖田ってんでさ。沖田総悟」

「俺は土方十四郎。お前とは気が合いそうだ」

「ですねぃ。土方さんは、やっぱりあれでしょ?貴族に恨み持ってんでしょ」

「あぁ。そりゃあな。憎くて憎くて仕方ねェ」

「俺もでさぁ。だから狩る」

コツコツ二人で足音を響かせ歩く。目立たぬ路地裏に潜み、会話を続けた。

「前から目を付けてたんですよねぃ。実は。えらく美形な詐欺師がいるって噂で聞いたもんで」

「ありがとよ。俺は事件聞いて気になってた。お前みたいな奴が犯人だとは誰も思わないわな」

「そうですかぃ?ま、童顔だって言われるけど」

「ふん、それが武器かよ」

「武器にもなりまさ。・・・それにしても、」

そっと土方の頬に沖田は手をやった。
ゆっくりなぞり、首元にまで手を持っていく。

「いい男ですねぃ」

「それが武器だからな」

「ふふ、変な気分になっちまう」


そっと背伸びをし土方に口付ける。形の良い唇が重なった。
ん、と沖田が声を洩らし離れる。
目を細め、首に手を回した。

「何だよ、友情のキスか?」

「会って間もなく言うのもなんですが、愛情のキスってことにしてほしいねぃ」

「ふ、子供騙しな・・・。味わってみるか?騙され続けた令嬢の気分を」

「あの頭の悪い令嬢の?遠慮しまさぁ。そんなの、いらない」

苦々しい顔をし沖田は目を反らした。

「じゃ、何がいい?俺は仕事のためなら男も口説くぜ」

「だから、俺が貴族って設定止めてくだせぇ!アンタは貴族相手じゃないと本気出さねぇのかぃ」

「じゃ、おねだりしてみろよ。俺は頭の悪い貴族ばかり相手にしてきたんだ。お前は頭がキレそうだし、俺をその気にさせるなんざ、たやすいんじゃね?」

「・・・。」


無表情になり沖田は考える。何度も詐欺を繰り返せただけの甘い感覚を、味わってみたい。そう思ってしまった。もう詐欺に引っ掛かっているのかもしれない。土方はそれほど魅力的だった。


「・・・」


ゆるりと唇を合わせる。吸い、ちろりと舌を出してみた。
瞳は開いたままで、見つめ合い軽いキスを交わす。とろりと沖田の瞳が蕩け出すと、土方は右手をぴくりとさせた。


「キス、して、」


「・・・」


切なげに眉が寄り、うるりと涙が浮かんできたとたん、土方は両手で沖田の顔を包み込んだ。

「ん、ふぅ、」

「は、」

「あ、んちゅ、」


路地裏に水温を響かせ舌を絡め合う。温かく、身体の芯がじんとする。寒い今に、この行為は心地良かった。

「ん、は、き、きもちいい・・・」

「ふ、いいな、お前」

「お前じゃなくて、」

「・・・沖田?」

「んーん」

「総悟。」

「・・・」

赤い顔のまま沖田が笑顔を見せた。今度は影も何もない可愛らしい笑みだった。
それを見て、土方は久しぶりに微笑む。こんな気分は久しぶりだ。

「どうしよう、土方さん。おれ、止まんないよ・・・」

「ん。俺も、何だか今日は、変だ。・・・会ったばかりなのにな。総悟」

「会ったばっかなのに、・・・好き、みたい、でさ」

沖田の顔がさらに赤みを増す。
そんな沖田の額にキスを一つ落とし、土方はぎゅっと彼を抱きしめた。







 


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!