(けもみみ土沖)(しょた風味。・・・注意!)


おはなばたけでうさぎさんは、














月夜のお花畑にその子はいました。

しくしくと心細い声を洩らしながら、だれもいないお花畑にすわりこんでいます。
その子は泣くのがきらいでした。
悲しいこともきらいです。けれどもどうしても、涙が止まらないのです。
そんな自分がいやで、いやで、せめて声だけはあげずにと、ぽろぽろ涙を流していました。




「!」





ふいにがさりと音して、その子の耳がぴくりと動きます。真っ白な耳はゆらゆら揺れ、心細い気持ちを表しているかのよう。


「だ、だれ?」


ずっとだまっていても良かったのですが、気になり声をかけてみます。しんと静まりかえったお花畑。しばらくするとぴょこりと真っ黒な耳が白いお花の間から現れました。

「?」

「あー・・・、俺は、別に、泣き声で気がついたわけじゃねェからな。においで分かるんだからな。泣いてる声なんか聞こえて、ねェ、ぞ」

やけにしらじらしい言葉が聞こえてその子の耳がぴんとなります。どういうこと?そしてあなたはだれ?


「・・・驚くなよ」

「・・・!」


背後に月の光をかかえて、真っ黒な耳が立ち上がりました。
罰が悪そうな顔をして、その子を見下ろします。


真っ白なお花畑の中に立っていたその耳は、全身が真っ黒でした。


「???」

「・・・あ?てめェ、驚かねェのかよ?」


驚くも何も、その子は『野生のどうぶつ』を初めて見たのです。だれ?なにもの?どうしてここにいるの?そういう疑問しか浮かびませんでした。


「普通オオカミ見たらうさぎは逃げんだろ」

「おおかみ?」

「おいおい、もしかしてお前ヒトに飼われてたか?」


その言葉を聞いてその子はうつむきました。気が付いたらこんな広いお花畑にいたのです。きのうまでは少し狭いアパートにいたのに。


「・・・ふっ、ふえ、ふえぇぇん」

「あっ!?ちょ、泣くな!」


はっきりと『捨てられた』ことを自覚してしまったその子はがまんできずに声を出してしまいました。ああ、せっかくがまんしていたのに。さいごにはやっぱりないちゃうんだ。

「ふぇぇ、うぇ、ぅぅああぁぁん」

「〜っ、ああもう!」

「!」

一度オオカミは遠吠えをしてその子を抱きしめました。泣いた子の責任は取らなければと、責任感あふれるオオカミでした。


「う、う、う、」

「泣くなって、・・・おまえ、名前は?」



「・・・そぉご」




知らない方に抱きしめられている。そう考えるととつぜん恥ずかしくなり、涙もひっこんでしまいます。ぎゅっと黒い背中に手を回し、腕の中でそうごはふるふる震えました。


「そうごか。俺はヒジカタ」

「ヒジカタさん」

「よしよし」


ふわふわの耳と一緒になでられて、あまりの気持ちよさに目を閉じてしまいます。
そうごはもう一度ヒジカタを見てみました。


「・・・。」

「?何かついてるか?」


とても格好の良いオオカミでした。毛並みも良く、目はギラギラと銀に光っていて、お月さまのよう。

少し見惚れてそうごは、うつむいてしまいます。顔が熱い。こんな気持ちは初めてでした。


「こら。食べちまうぞ?」

「!!」


無視されたと勘違いしたヒジカタは、そうごのふわふわの耳をぱくりと口に含みました。そのまま甘かみ。びくびくとそうごの身体が震えます。

「ひぁ、」

「こーんなちっせェくせに・・・いい声出すじゃねェか」

最後にぺろりと舐めて離しました。そうごは白ウサギにしては小さい方です。大きなヒジカタの胸にすっぽりとおさまり、逃げられませんでした。


「味見、させろな?」

「ふぇ・・・?」


ヒジカタの顔が近付いたかと思ったら、そのまま唇同士を重ねられました。
熱っぽい視線をそうごに投げます。ギラギラ光るそれが、綺麗で、目が離せません。

「ふ、ぁ、ん、んっふぅ・・・」

「ちゅ、」

長いキスにさすがに目を閉じると腰に手が回されました。これから、どうなるの。激しく音を立てる心臓にとまどいます。本当に、初めてだらけです。

「やぁ・・・」

「ん、やべ、おいし」

まだ足りないのか、唇をぺろぺろと舐めます。
くすぐったくて身をよじると、逃がすものかと身体が密着してしまいます。


「あ、あ、はずかし、でさぁ・・・」

「そうか・・・?でも気持ちいいだろ」


するりと舌を差し入れもう一度。
くちゅくちゅと水の音がして、口の中が熱い、蕩けそうです。

「ん、くっちまいて、」

「ふぁん・・・」

少しヒジカタの本音がもれてしまいました。しかし今食べてしまうとこのかわいい子がいなくなってしまう。それは嫌でした。


「オオカミ失格かも」

「ぁん、」






真っ白なお花畑に真っ白なそうごをおしたおしましてしまいます。
花が散って、月の光とかさなりました。



その日の夜は、お花畑に甘い声が響いたそうです。













***
・・・?
これ確実にくってますよね。最終的におおかみさんはうさぎさんをくっちまいました、と!(おいこら!
うさみみ・・・好きなんです。今ねこみみよりうさみみきてます。そしてけもみみ土沖楽しかった・・・!


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