(沖誕!)
「一番隊、今週の掃除場所は・・・庭の草むしり」
絶対、絶対忘れてる
Happy ticket
沖田はイライラしていた。
ぶちぶちと草を抜きながら、黒いオーラを漂わせている。
何だアイツ。嘘だろう。何も用意してないってか?
広い屯所の庭の隅っこで、ブツブツと呪いのように土方の悪口を並べる。
そう、今日は沖田の誕生日だ。
それなのに、恋人(多分)の土方は何もサプライズしてこない。それどころか、何も言ってこない。
一言「おめでとう」と言ってくれるだけでもいいのに。それだけでも喜べるのに。
土方と沖田の関係はハッキリ言って微妙だ。
最近になってやっと抱き合ったりキスしたりする仲になったが、ちゃんとした告白というものをしていない。
もしかしたら、遊ばれているかも?
そう思い勇気を振り絞って聞いてみたら返事は「んなワケねェだろ」。
その時の土方の顔といったら、忘れられない。
くるりとそっぽを向き、耳まで真っ赤にしていたのだ。
こっちまでなんだか居たたまれなくなって、ワケわかんないが真っ赤になってしまって。
通りすがりの山崎(空気読めねェ)に「何してんですかアンタら」って言われて照れ隠しにボッコボコにしてやったっけ。
「(えへへ・・・)」
・・・って、何考えてるんでィ。
俺は今怒ってるんでさァ。
思い出し幸せになってしまった沖田ははっと気付きブンブンと頭を振る。
とにかく、そんな微妙な関係だがそれでも想いは通じ合っているというのに、何もしてこないとは何事か。
「あ、沖田さん今日誕生日じゃないですか。おめでとうございます」
え?と振り向くと隊士の一人(新人だっけ?名前は知らない)がおめでとうと言ってくれた。
おうと片手をあげて返事をし、ハァァと溜息をついた。
「(なんでィなんでィ隊士は言うのによぅ・・・。土方ァ土方ァ)」
何で何も言ってこないの?
もしかして本当に忘れてる?
そんなことあるはずがないと信じたい。
でもアンタはいつもひょうひょうとしているし。
俺の誕生日なんて、どうでもいいの?
「総悟!」
「!!!」
噂をすれば、という奴か。いや、噂はしていないけれど、たしかに、土方の声。
泣きそうになった目をしばたたせて、すっくと立ち上がり振り向いた。
「な、何でィ」
「来い」
掃除中なのに、沖田隊長に何の用だろう?
そんな隊士たちの目を受けながらも、早歩きで土方の
元へ向かった。
「だ、だから、何でィ」
「・・・・・・」
抱きしめられている。
な、何故こうなった。何だこの人は。
内心慌てまくっている沖田だが、表面だけでも涼しい顔をした。
「土方さん?」
「誕生日、おめでとう総悟」
えっと顔を上げる。
擦り寄ってくる唇。
そのまま重ねられて、ゆるりと擦られた。
「ん・・・!」
「は、総悟、コレ」
手渡しされたソレを見て沖田は仰天した。
これ、これって
「遊園地のチケット・・・?」
「おう。デートとか・・・した事ないだろ?今日非番取りたかったんだが、シフト無理でな・・・。来週ならなんとか二人抜け出せるんだが・・・悪い」
右肩にトン、と頭を乗せられて慌てる。
何で謝るの?
「今日行けなくてごめん」
そんなことで悩んでたの?
だから今日素っ気無かったの?
悪いなって、ごめんって、ずっと思ってたの?
土方さん。
忘れて、なかったの。
「あ、ありがとうございやす・・・」
「総悟・・・」
「そんなことで謝らないでくだせェ。まったくもう、くだらないことで悩むんだから」
「オイ」
「ありがとう」
「・・・、」
「とっても、嬉しいです」
ふにゃりと笑ってみせると、土方は照れた様に微笑んだ。
「おう・・・」
「夜は、すげェキレーはホテルに泊まろうな」
「!」
Happy Birthday! 7.8
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