(土誕!)




「できたぜぃ・・・」



まどろむ朝日の中、屯所のキッチンで沖田は一人呟いた。
できたそれをビンに詰め、大事そうに両手で包む。


待ってろ副長!さんざん悩んだプレゼントを今渡しに行ってやる!!




Birthday dedicated to you!
   あなたに捧げる誕生日!







るんるんと鼻歌でも歌いそうなくらいご機嫌な沖田が廊下を歩く。
ビンを大事そうに抱えて、リズムをつながら、足音も軽い。

そのビンの中身は副長の好物のマヨネーズらしい。
可愛らしくリボンまでつけて、それをするりと撫でてみた。

前に、好みのマヨネーズの味を散々聞かされたのが役にたった。
あんな話、覚えていても意味ないと思っていたのに。
土方はマヨネーズの話にはうるさい。
いや、食べ物類の話全般うるさいかもしれない。
彼はグルメなのだ。

さんざん試して、沖田は彼の好みの味のマヨネーズ作りに成功した。
しかも手作り。
多分きっと、喜んでくれるだろう!


『ありがとな』


微笑んだ土方の顔を思い浮かべてみる。
それだけでほわんと嬉しくなってしまうから、自分は奴に本当に惚れ込んでしまっているのだろう。
らしくない行動をとってしまったが、今日だけはまぁいいだろう。



そう。今日は土方の誕生日だった。



「(うわぁ、本当俺らしくねェ!だってこんなこと、したことないぜ・・・)」

手の中のビンを見つめながら、一人顔を赤くした。


副長室まであと少し。
廊下の角を曲がろうとして、沖田は足を止めた。


「副長!お誕生日おめでとうございます!」

「お、山崎か?サンキュ」


山崎と土方の会話が聞こえたのだ。
チラリと盗み見すると、山崎が土方に青いプレゼント箱を渡している。

あ、あんにゃろう!俺を差し置いて土方にプレゼントとは!ゆるさねえ!


「なんだよネクタイか?」
「きっと似合いますよ!」
「俺がスーツ・・・着るかなァ・・・」
「着るじゃないですかー!たまにですけど」


楽しそうに話をしている二人にぐっと悔しくなる。
しかしそこに割り込むなんてことはしたくない。
ヘンなプライドがまだ意地を張っていた。

・・・しかし、プレゼントにネクタイだなんてそんなこと、考えもしなかった。
藍色のそれは綺麗で、たしかに土方に似合っている。

そこまで思考がいくと、突然沖田は不安になった。
自分のこのビンを、土方は本当に喜んでくれるだろうか?
おいしくないとか、毎日食べてるのに誕生日も同じマヨネーズはなくねェ?とか言われたらどうしよう。

他の人のプレゼントの方が良いような気がして、もやもやと考えこんでしまう。

うう、もう、いっそのこと渡さない方がいいかもしれない・・・!
涙目でマイナスな考えしか浮かばない。
そう悩んでいたせいか、後ろから土方が近付いてくる気配を読めなかった。


「総悟?」
「ぎゃぁぁぁぁぁ誰でィ!」
「うわっ何だよ俺だって!」

二人して驚く。かたりとビンが廊下に転がった。

「何だこれ?」
「あっ、」

ひょいとそれを拾い上げられ、あわてて取り替えそうとする。

「ん?マヨネーズ?」
「・・・そうでィ」

もうどうにでもなれ!
半ばやけくそで沖田は言った。



「たたた誕生日おめでとうございやす!」

「・・・え」

土方はぱちくりと瞬きをした。
ビンを沖田を交互に見、そして口元に片手を置いた。

「マジかよ・・・お前が?これ、手作りじゃねェか・・・」
「わ、悪かったですねィ手作りで・・・」

どうせまずいとか言うんでしょう!
そう叫んだら手を引かれ、すっぽりと土方の両腕の中にいた。

「なっ・・・!?」
「あぁー・・・やっべ、嬉しい」

耳元で呟かれて、沖田はぼふっと顔を赤くした。

「そ、そんな・・・山崎のネクタイの方が嬉しいでしょう・・・?」
「はァ?何で知って・・・あぁ、聞いてたのか」

うっと口ごもる。
聞こえたの!と言い張るが土方は信じない。

「クク、ま、どっちでもいいが」
「何でぃ!」
「あれ、山崎個人のプレゼントじゃないぜ」
「・・・は!?」

今度は沖田が目をぱちくりとした。

「隊士何人からかのプレゼントだってよ。だからそんな嫉妬することないんじゃねェ?」
「嫉妬なんて・・・してやせん」
「はいはい」

くすくす笑われて、もう、この人には敵わないと眉を寄せた。

「ありがとな。大事に食うよ」

耳元で囁かれ、ちゅっと音を立ててキスをされた。
赤い顔を土方の胸に押し付け、おめでとうと祝いの言葉をもう一度。



そして、当たり前のように一番に喜んでくれるこの人が大好きだと、改めて自覚した。








Happy Birthday! 5.5
Hizikata are loved!!


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