土→沖(めずらしく
(シリアス・・・)



「楽しかったですまた今度遊んでくださいね」






落ちていく俺に投げかけたそのセリフ。
驚きすぎてその時は怒りも何もなかった。

見えたのはただ、笑っているその愛しい顔。






  鎖と首輪の間に血。
究極ホラー。





ただの攘夷志士かと思っていた。
地愚蔵と名乗る男は。

それなら今まで何度も潜り抜けてきた難問だし、今回も易々と回避できると思った。
しかしできなかった。

総悟がいたから。



「ドジ踏んじまったらしいですよ俺達」

それを聞いてやっちまったと軽く思った。
捕まるなんざ情けねェ。
しかもコイツと一緒の時に。
頭を抑えて呻く。痛い。

・・・まァなんとかなるだろう。

本当に軽くそう思っていただけだった。最初は。


「爆弾が組み込まれている」


パチもんサイコ野郎がそう口にした。
目の前が真っ暗になった。
どちらかが死ぬ?
俺が?総悟が?
俺一人ならどうにかなる。
どうにかして、抜け出せる。
でも一番に思わないといけないのは、隣にいるこいつだ。
俺だけじゃない総悟がいる。
どうすればいい?
二人で抜け出すには、どうすれば。


ぐるぐる悩んで、いつの間にか総悟と争って、汚れ役を擦り付け合っていた。
こんなことをいつまでもしているのは無駄だ。
そうわかっているがでも、止められなかった。

俺は、総悟が一番大事だから。

願わくば、二人で助かりたい。
叶わないならそこまでだ。
俺が自害するしか・・・方法はない。


それなのにこいつときたら、何だ?

いきなり糸のこぎりを自分の首に突きつけて、「忘れてくだせェさっき言ったことは全部」。
血が滴って、隊服にでろりとついた。

プチリと切れて、気が付いたら走り出していた。





「また遊んでくださいね」





振り出しに戻る。
ああこれは、総悟が仕組んだ遊びだったのか。
唸ってあーあと溜息を吐いた。
ごろりと寝転び、身体の節々が痛い。

助かった?総悟は。
総悟を一番に考える自分にオイオイと思うが、大切だから仕方がない。

・・・しかし傷ついた。
あんなに真剣になって助けて、死ぬな死ぬなと思って
いたのに、全部嘘。

「そうとう惚れてんな、俺も」

ぽつりと呟く。
ホレテル。
もちろん裏切り者のあいつのことだ。









「すいやせんねェ」



勿論爆発も何もしていない屯所に戻ったら、これまた笑顔でそう言われた。
はぁ、と溜息をついて素通りする。
もう、疲れた。寝かせろ。眠い。

「?」

つっかかってこない俺が珍しいらしい。
きょとんと不思議そうな顔で見ていた。


それだけか。ここまでか。

俺はあいつにとって遊びの対象。

両思いなんざ程遠い。

あの時言えば少しは状況が変わっていたのだろうか「お前がカギを外せ」と。

追いかけてもこない俺の最愛の部下に、気付かれないよう舌打ちをした。





俺の片思いはやはり、届かないらしい。











END







***
不甲斐無い片思いの土方さん・・・
監禁編はせつねェ土方さんでお送りしました(何
舌打ちは精一杯の強がり。
この話は・・・土方さん本気で傷ついてるといい、な


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