山神



チャイナさんは誰と付き合っているのだろう?

相変わらずうるさい教室の一番隅、山崎はぼんやりとしながら、結構本気で考えていた。
頬杖をつきながら沖田と喧嘩真っ最中な神楽を見る。
憎たらしい顔をした沖田に鉄拳を加えるが、なんなくかわされてしまう神楽はとても悔しそう。

そんな疑問を抱いたのはつい最近。
意外と神楽の周りには男が多いことに気がついたからだった。
意外と・・・と言ったら失礼だろうが、担任の銀八先生は異常に神楽を心配しているし、幼馴染の新八はいつも神楽と親しげに会話をしている。
そして今、目にも止まらぬ速さで殴り合いをしている沖田と神楽も、この上なくあやしいと思うのだ。

きりがないな。

溜息をつき考える。沖田が出てきたのなら土方もありえないことはないし(土方と神楽が付き合うというのも妙な話だがお似合いだと言えばお似合いだ)、何だったら動物好きな桂とも定春つながりで気が合う。


「(誰かと付き合う気はないのかな?チャイナさんだったら、誰とでもお似合いになるよ)」


今にも流血沙汰になりそうな程白熱し出した喧嘩を半眼で見つめていた。

「このやろ、いい加減おとなしく殴られるネェェェェ!!」
「バカ言えチャイナァァァァ殴られるのはテメェだァァァァ」

仕舞いには消しゴムやら筆箱やらがひゅんひゅん飛び出したからたまらない。
うっわ、コンパス、危な!

「って、ぎゃあああああこっち来ないでェェ!」

不運な山崎はまさかの黒板の破片に当たってしまった。
ガツン!
という音を頭で聞いて(だって耳では聞こえなかった。頭の中でマジで響いた)、そのまま後ろにひっくり返る。

「じ、ジミー!」

ぱたぱたと小走りで駆け寄ってくる神楽が視界の端に映る。
ああ、血が出てたらどうしよう・・・。

「よかったアル、角にはぶつかってないアルヨー」
「けっ、そんなトコにいる山崎が悪いんでィ」
「おま、謝るアル!」
「ふんだ」

ふいっと沖田は教室を出て行った。ああいつもながらなんてひどい・・・。

「ジミぃー」
「あの、本当に大丈夫だから、それとジミーって言うのやめてくれると助かります」

ジミーって地味からきてるんでしょ?人間、本当のことを言われると悲しくなっちゃうんだよ。うう。

「うん、わかったヨ」
「山崎でいいよ」
「ザキ!」
「はい出た死の呪文。それもやめて」

頭をさすりながら冷静に突っ込む。
あいたた。と呟きながら血が出ていないか確かめた。
・・・出ていない。よかった。

「本当にごめんヨー」
「いいですよー。でも今度から気をつけてくださいね」
「反省するアル」

「沖田さんと仲が良いのはいいことだけど、もうちょっと素直になってみたらどうですか?」

「は?」


ぱちくりと元々丸い目を倍ほど丸くしてみせる。
おお、でかいなぁなんて呑気に考えていると拳が飛んできた。

「でぇぇぇぇぇ何ィィィィィ!!!?」
「何でワタシとあいつが仲が良いなんて言うアルか!!」

どうやら神楽はご立腹らしい。

「ええええっ、す、好きじゃないんですか!もしくは付き合ってるとか!」
「な、な、な、何で・・・!」

わなわなと体全身が震えている。
そんな神楽を初めて見た山崎は照れてるのかな?とか無責任な勘違いをしていた。

「わた、ワタシがもしも付き合うなら、もっと普通の奴がいいネ!」
「え、普通って・・・もしかして新八くん!」
「だから何でそっちにいくアルか!?」

ばちん!
と今度こそ叩かれた。
左ほっぺが痛くてたまらず思わず呻く山崎。
・・・それでも神楽なりにかなり手加減をしているのに。

「もっと普通すぎる奴がいるアル!」
「この教室で?」
「この教室で!」

うんうん考えるが普通って、普通って、何だ?
考えれば考えるほど普通が何だか分からなくなるミステリー。
新八しか思い浮かばない。

「わかんないです。お、教えて?」
「お、教え、・・・、


特徴的な顔してなくて

そこらへんにいそうな奴で

ちょっと変な趣味してて

声が少し高くて

クラスでも目立たず隅で笑ってる


そんな・・・奴がワタシは、好きアル」


顔を真っ赤にして、瞳はうるうると潤んでて。
そこまでこのこを真剣に惚れさせた奴がこのクラスにはいるのだ。・・・誰だ。

少し、嫉妬をしてしまった。

「(ずるいなぁ、そいつ。こんなかわいいこを・・・)」
「えっと、えっと、まだ分かんないアルか」
「はい?」

それまで可愛らしく縮こまっていた神楽が急にしゃきりとした。
もう、こうなりゃ言うしかないアル!とかなんとか叫んで。









「ワタシは、ジミー好きネ!」










なんか止まった。


え、何が?呼吸が。


「ええええええええええええええええ俺ェェェェェェ」
「だからさっきから言ってるアルよぅ」

両手でスカートを握り締める姿にきゅんと胸が高鳴った。
ああ、どうしよう、このこ、やっぱかわいいよ!


「ちょ、ちょっと、チャイナさん!」
「んぇ?」

ひっぱって、腕の中へ包み込む。
わきゃぁとなんとも可愛らしい声が聞こえたが山崎はきょろきょろ辺りをうかがう。

よし!みんな騒いでいてこっちに注目なんかしていないな!



「俺も!俺も好きだよ、かわいくてつよいチャイナさんが大好きだ!」
「!!!」

今やっと分かった!好きでも何でもなかったら、誰と付き合っているんだろうとか気にしないよね。
と山崎は神楽の耳元でしゃべる。
いつもの敬語なんて、すっかり忘れていた。

「好きだよ。・・・神楽ちゃん」
「あぅっ!?」
「ね。もっかい言ってほしいなぁ」
「・・・ジミーのくせに、ナマイキアルぅぅぅ」
「神楽ちゃん!」





満天の笑顔の山崎に負けて、もう一度勇気を出して神楽は言った。








大好きアルヨ!
(特に笑顔が、)(教室の隅でにこにこしているの!)




まさかの山神すみません
超絶マイナーにはまっちまいまして・・・orz
前ぇぇーに書いてそのままだったので思い切ってアップしてみました
・・・しかし山神って検索できないよねやまがみになるよね



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