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痛み分け
23



「イワン、アントニオ。二人にこいつを紹介しておく。こいつはバーナビー。バーナビー・ブルックスだ」
「…ブルックスだと?」

ブルックスの名前に反応したのはガタイの良い男、アントニオだった。
虎徹はアントニオのその反応に頷いて言葉を続ける。

「バニー、こっちの二人は俺の仲間だ。デカイのがアントニオ。で、こっちがイワン。さっきの能力はイワンの能力なんだ」
「こっ、虎徹さんっ!」

イワンは自分の能力を出会ったばかりの、しかも非ネクストのバーナビーに告げられて非難の声を上げる。
しかし虎徹はそんなイワンの非難の声を無視したまま、もう一人、ここに居ない人物の名前を口にした。

「もう一人、カリーナって年頃の女の子が居るんだが。今日は居ないみたいだな」

あいつも凄い能力を持ってるんだ、と笑顔で身内の自慢をする虎徹に、バーナビーは彼の知り合いは大変だなと苦笑を漏らした。

「おいおい、お前は身内自慢をしに来たのか?虎徹」

呆れた声で虎徹を制したのはアントニオだった。
虎徹は以前にも同じようなことをしたのか、しまったなと照れ隠しに頬を掻いて、取り敢えず座るかと適当な席に座るようバーナビーを促した。

「…彼、バーナビー…さんでしたよね。一体何者なんですか、虎徹さん」

虎徹がバーナビーの背を追って歩き出すのを服の裾を掴んで引き止めたイワンは、彼に小声で訊ねた。
お前は知らないのか、カウンターから低音が聞こえて、イワンはアントニオの方へと向き直った。

「バーナビー・ブルックス。彼のご両親、ブルックス夫妻は虎徹や俺、他にも沢山のネクストを助けてくれた恩人で、彼はその息子さんだ」
「そ、そうだったんですか…!?」
「ああ。俺らを匿ってくれた人たちさ。な、アントニオ」
「懐かしいな。俺もお前もまだまだガキで、色んな無茶やってたな」

アントニオは懐かしげに笑い、虎徹はそうだったなと相槌を打った。
そして虎徹はもう一度イワンの頭を撫でて、バーナビーの座るテーブルへと歩んだ。
イワンはそんな虎徹の姿を見詰めて、アントニオの居るカウンターんの中へと引っ込んだ。珈琲の用意をする為だ。

「すまん、待たせたな」

よっこいしょと親父臭い掛け声で椅子に腰かけた虎徹に、バーナビーはおじさん思いの良い人たちですねと小さく笑った。
その姿に虎徹は驚いて、目を瞬かせる。

「良い雰囲気のお店ですね」

骨董品など置かれたテーブルや時計、壁に掛けられた絵画をを見詰めてバーナビーの言葉に、虎徹は我に返って、気に行って貰えたなら良かったと呟いた。
そうして虎徹が微笑んでいると、イワンがカウンターから現れ、二人の席に珈琲を持って来る。
イワンが二人の前に珈琲を置くと、バーナビーは丁寧にありがとうございます、とお礼の言葉を述べた。
そんなバーナビーにイワンは戸惑いを見せたが、小さく頷くとそそくさとお盆を抱えてカウンターへと戻ろうと踵を返した。

「おい、イワン。ちょっと…」

虎徹はそんなイワンを呼び止めて、手招きした。
イワンは一度、カウンターテーブルにお盆を置いて虎徹の元へと戻ってくる。

「何ですか?虎徹さん」
「ちょっとの間、こいつと二人で話がしたいから、奥の部屋に行ってて欲しいんだ」
「え…」

それは駄目ですよ。
イワンは抗議の声を上げようとした。
だが、いつのまにかイワンの後ろに立っていたアントニオが、彼の肩を軽く叩いて言葉を制した。
イワンは声を呑み込んで口を噤む。

「わかった。俺とイワンは奥の部屋に居るから終わったら呼んでくれよ、虎徹」

アントニオはそう言うと、お店のドアノブに掛けられていたオープンの札を引っ繰り返してクローズに変え、扉を施錠するとさっさと奥の部屋へと引っ込んでいった。
イワンはそんなアントニオの姿を見て、不満そうな表情を浮かべたが、虎徹に頭を下げると失礼しますとカウンターの隣の扉を開け、奥の部屋へと戻って行った。





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あきゅろす。
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