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痛み分け
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いたいの、いたいの、飛んで行け。

幼い頃の記憶の中で。
誰かが怪我をした僕に魔法の呪文を唱えてくれた。
僕は、少し大きな掌が僕の頭をくしゃくしゃと撫でる様子をじっと見詰めて、離れていく姿にありがとうと笑った。






痛み分け







「これだけ情報があれば十分です。今まで本当にありがとうございました」

プラチナブロンドの髪を揺らして青年は言った。
言葉は冷めたものだったが、眼鏡から覗くエメラルドグリーンの瞳には感謝の気持ちが滲み出ていた。

「本当にあなた一人で行くつもりなの?」

体格の良い、物腰の柔らかな男は、優しい声色で青年に尋ねた。
青年の気持ちには迷いはなく、男はしょうがないわね、と肩を竦めて笑った。

「あなたが決めたのなら、私は止めないわ」
「すみません。本当にあなたには頭が上がりません」

あなたがいなければ僕はきっと生きてはいませんでしたから。
青年は瞳を細めて頬を緩めた。
男はそんな青年を、どこか悲しそうに見詰める。

「そう言うならどうか生きて帰ってきてちょうだい、ね?」
「……」

男は右手を差し出した。
青年はその言葉に頷くことはせず、男の手を握った。

「あなたにどうか神のご加護を」
「ふっ、あなたは無神論者でしょう?」
「何でも、希望があるならすがっちゃうわ」

男は青年の肩を叩いて、ゆっくりと離れる。

「さようなら」

青年は軽くお辞儀して踵を返す。
手は振らない。振り返らない。

(僕には、帰る場所はない)

あの日死んだ少年は復讐者として、この手に銃を握り締めた。







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あきゅろす。
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