短編 虎耳しっぽの話・前 朝、目を覚ますと耳としっぽが生えていた。 「うえぇえぇぇえ!?なんだこりゃーっ」 「煩いですよ、おじさん」 洗面所で大声を上げた虎徹に、部屋で寝ていたバーナビーは機嫌の悪そうな声で返した。 むぐっと虎徹は自分の口を押さえて、鏡でまじまじと己の姿を見詰めた。 耳はまあるく、しっぽは長く。猫のように見えるが、黄色と黒のタイガーカラー。 これは、 「虎か?」 歯にもちょこっと牙が生えていて、手もどことなくプ二プ二している。 虎徹は腕を組んで昨日のことを思い出したが、何故自分がこんな状態になっているのかさっぱりわからなかった。 取り敢えず、生えてしまったものは仕方がないと能天気な思考で、バーナビーの眠る寝室へと戻った。 ベットへと戻ると、眉を寄せたまま寝ているバーナビーの姿があった。 彼が朝、弱いことを知ったのはもう大分前の話で、最初はその凶悪な面に驚いたりもしたが、今はもう慣れっ子だ。たまにだが、そんな姿さえ可愛く思えたりする。 虎徹はベットサイドへと静かに歩み寄り腰を掛けると、そっとバーナビーの頬にキスを落とした。 「バニー、バニーちゃん」 一度目が覚めたバーナビーは神経質か、はたまた不眠症かわからないが、二度寝が出来ない。 それなら、この姿を見て貰って、何か解決策を考えて貰おう。 瞼が震え、眠たげな緑が瞳が緩やかに動き、虎徹の姿を映した。バーナビーは彼を頭の上から足の先まで見遣ると、違和感に気付いたのかポツリと呟いた。 「おじさん、そういう趣味があったんですか?」 「いやいや違う」 起きたら生えてたんだよ、という声はベットに引き摺りこまれたことによって相手には伝わらなかった。 目を閉じたままのバーナビーは虎徹を自分の胸の中へと引き寄せ抱き込むと、背中を撫でた。 「あなたは僕を誘うのが上手ですね」 「ちょ、待て!ば、ばにー!」 耳元でバーナビーです。と低音で囁かれて、黄色と黒色の耳がぴくんと震えた。 背中を撫でていた手はどんどんと下へ下がり、尻を撫で、しっぽの付け根の部分に触れた。 「…ぁあ…っ!!!」 ぶるりと身体を震わせると、バーナビーはクスリと笑った。 「本物みたいですね……」 「ホンモノ!コレ本物だって!」 だからやめろ、と暴れ出した虎徹に、漸く目も頭もはっきりしてきたのか、バーナビーは虎徹のしっぽを確認して本物、と呟いた。 虎徹は何度も頷き、パタパタとしっぽを揺らした。 「犬、ですか?」 「虎だよ、虎!」 虎徹はバーナビーの腕から抜け出してベットサイドの棚の上から眼鏡を取って渡してやった。 バーナビーは目を擦り、受け取った眼鏡を付ける。 「確かに、虎ですね」 「だろっ!」 バーナビーは身体を起こしてベットの上へと座った。 そして、虎徹の姿をまじまじと見詰めて、昨日何か変なものでも食べましたか?と質問をした。 「昨日は一日中お前と一緒だっただろ?」 「そうですね、あなたは昨日一日中僕の下に…」 「それは言うな」 顔を真っ赤にさせる虎徹の姿にバーナビーは今更照れることないでしょう、と言った。 「お前は大丈夫でも、俺は違うの!」 熱くなった頬をパタパタと手で扇いで冷ます。 バーナビーはそんな虎徹の耳へと手を伸ばした。 柔らかな毛がふさふさして気持ちが良く、まあるい縁は軟骨の部分で少し堅い。息を吹きかけると虎徹は擽ったそうに笑い、耳がぴくぴくと動いた。 「本物ですね」 「だから、さっきから言って……!」 「ちゅ、」 唇を尖らせた虎徹を、バーナビーはリップキスをして黙らせた。 不意打ちに弱い虎徹は手で唇を覆い、キッとバーナビーを睨みつけた。 そんな虎徹を気にするバーナビーではない。 今度は彼のしっぽへと手を伸ばした。毛並みは耳と同じく柔らかで、少し力を入れて握ってみれば、虎徹は間抜けな声を上げた。 「どうしたんですか、おじさん?」 「え、いや…、なんかビックリした…」 目をぱちぱちと瞬かせ驚く虎徹が可愛くて、バーナビーは握り締めたしっぽを上下にスライドさせた。 「ちょ…おま…、あっ!」 「おじさん、しっぽ弱いんですね」 びくびくと身体を震わせる虎徹を見て、完全にスイッチの入ったバーナビーは彼をそのままベットへと押し倒し馬乗りになった。 「ま、まて…バニー!これ、どうしたらいいんだよ!?」 「可愛いから問題ないでしょう」 そういう問題じゃなくて、と声を上げれば唇に噛みつかれるように口付けされ、くぐもった声が零れた。 バーナビーは虎徹のパジャマ代わりのTシャツに手を突っ込んでたくし上げた。 淡く色づいた胸の突起を指の腹で撫で押しつぶしてやれば虎徹の身体はひくんと揺れた。 「んぅ…んっ…」 唇を丹念に舐め回され、舌を差し込まれる。 咥内を荒す乱暴なバーナビーの舌に自分の舌を絡め取られて吸われる。 それだけで腰に甘い疼きが走り、虎徹は無意識にバーナビーの太腿に股間を押し付けた。 |