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短編
星屑



あいつの手を離したことに後悔がないと言えば、きっと嘘になる。


あいつはいつだって真っ直ぐだ。
両親の為に二十年もの年月を継ぎ込むくらいだから、当然それ以外のものを知らなくて、子供で。
そんなあいつとパートナーを組むことになって。
最初は嫌だとか何であんな生意気なヤツなんかと散々愚痴にしたりして。
それでもあいつが放っておけなかったのも事実で。
だから俺はあいつが過ちを犯さないように、きつくきつくその手を繋いだんだ。
だってあいつは大人なんだけど小さな子供のままで、俺はそんなあいつを心のどこかで気に入っていたんだろう。

両親を殺したとされるウロボロスの男もいなくなり、平穏な日々が訪れてあいつは人が変わった。
余裕が出来たんだろうな。
あなたがこの世界が美しいんだって教えてくれたんだ、なんて真顔でいうから、不覚にもそれをおしえてやることが出来たのが俺で良かったな、なんて思っちまったんだ。
そうやってあいつの世界に入り込んだり、ヒーロー以外の仕事も増えて納得出来なかったこともあったけれど、幸せというか、満ち足りた生活を送っていたと思う。

けれど、そんな満ち足りた生活の中でも変化というものはあって。
俺は自分の能力が減退していることを知ったんだ。
それはまるで、滅びる前の星が強く強く輝いて、そして消えてしまうような。

俺はその事実を受け止められなくて、そしてまたあいつに相談出来なくて、自分の心の内に隠した。
あいつが両親とアンドロイドの件で揺らいでいるのをフォローして、俺は俺で必死に減退を防ぐ方法を探したんだ。
しかし、減退というもの自体起こるネクストは稀で、俺はこのとき初めて自分の生きる道がなくなってしまうんだと理解したんだ。

そうして俺は、完全に能力が消失してしまう前に、ロイズさんやアントニオ。世話になった人にそれとなく挨拶をして、そして。
バニーの、あいつの手をそっと離したんだ。
頑張れよ、とか。お前一人で大丈夫だ、とか。
あいつに言ってやりたいことが沢山あったけれど、結局あいつにこんな姿は見せられなくて。
最後くらい先輩らしくありたかったなんてそんな夢を抱いたまま、俺はここから立ち去ろうと。

…いつ以来だろう。
涙が一粒、瞳から零れ落ちた。
もう二度とヒーローとして生きることも、あいつを支えることも出来ないなんて。
思い切り壁を叩いても、ハンドレットパワーはもう数秒しか持たなくて。
ただ自分の拳に痛みを残すだけ。
それでも、何度だって叩き付けて、手がボロボロになるまで。血塗れになるまでやめなかった。
もし、もしも。
願うならもう一度だけ。
この能力が最後にきちんと発動して。
そこにあいつがヒーローとして俺の前に立っていたら。俺はきちんと諦められるよ。
そしたら俺はあいつに、バーナビーに、さよならって言えるだろうから。
本当はずっとお前のパートナーで在りたかったなんて我儘、呑み込むから。






あきゅろす。
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