放課後初めて
『……あー。乗り過ごしちまった。
……あれ、何お前、傘持ってねぇの?
良かったらこれ使えよ。
俺ん家駅から近いからさ』
それだけだ。
偶然会って、
それだけ言って、
傘を押しつけて、
反対方向の電車に乗ればいい。
最強に恩着せがましいけど。
目茶苦茶お節介だけど。
何でだろ。
緊張してきた。
それから2駅、
ジリリリリ
発車のベル。
いつの間にか、
アイツは駅のホームへ移動していた。
俺も慌てて電車を降りる。
そこは割と大きな中継駅だから。
アイツの姿はいとも簡単に、
人並みに消された。
人に流されつつ
階段を駆け上がる。
『………あれ?』
俺はそこで放課後初めて、
アイツと目が合った。
駅から出ようとするアイツの細い手には
空色の、折り畳みガサ。
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