無表情の人形


※アニメの話
キャラ崩れ注意!
色々酷いですよ






なんで雷光が死んで、俄雨が生き残ったんだろうと思った。なんで、なんで。悪かったのは彼じゃないのに。なんで私を置いていっちゃったんだろう。俄雨は私から雷光を、奪い上げる存在でしかなかったのに。何故愛しい人だけ、私の目の前から消えてしまったの。泣きたいけれど、泣けない。雷光がいないんじゃ、泣くのは無意味で下らない事のように思えた。涙が意味を成すのは傍に愛しい人がいる時だけで、独りで流す涙は無意味どころか虚しさがプラスされて更に悲しさが募るだけだ。そんな事は、泣かなくとも分かる。残されたアパートで私は仕方なく俄雨と暮らすけど、口数は驚く程少ない。雷光がいないのでは、沢山思い出があるこの部屋も私をまるで他人のように無視している。最初の頃こそ、俄雨は私に色々と気を遣ってくれた。しかし其れにも俄雨は疲れてきたんだろう。当然だ、私が俄雨の気遣いをほぼ無視したに等しい。悲しいのは自分だけではないのに、悲劇をこの身に味わったのはただ自分だけのように思った。あれから既に数ヶ月は、経ったというのに。私は必要がないから殆ど外に出ていない。鏡を見るのが怖い。生気のない顔、異様なまでに白い肌。人間は此処まで死んだようになれるのか。今口にした紅茶に、味は無かった。この部屋に雷光が残していった彼の面影が私が視界を少しずらしただけで目に飛び込んできて、私の首を絞める。視界に入らなくとも私と同じ空間にあの人の面影を感じると、肌が火傷でもしたみたいにヒリヒリと痛み出して、嘔吐しそうになる。夜だって、数ヶ月前まで確かに感じていた筈の温もりを今は感じないから違和感の所為で眠れない。やっと眠れるのは徹夜を繰り返した私の身体が本能的に睡眠を欲して瞼が落ちる時だけ。本人が死にたいと、死んで愛しい人のもとに行きたいと思っていても本能はしつこく生にしがみついて離さず、ずっと私を彼には会わせないままにしている。なんて意地悪な本能だろう。私の意思に逆らう。本能が生にしがみついていて私はまだ死ぬことが出来ないのなら、笑っていられたあの頃に戻りたい。そうよ、それが一番。雷光が隣にいないまま、また前と同じように暮らすなど私には相応しくない、というより出来ない、不可能だ。私が元に戻る為には再び私に雷光と同じくらい大切な人が出来る事。でも、それも多分無理な話。



























凜さんが今のようになってしまったのも全て雷光さんがこの世を去った事が原因であり、その他の何ものでもない。その衰弱は痛々しい程なので、きっと彼女には隣にいてくれる誰かが必要なのだ。その誰かに僕がなれたらと思うが、彼女の様子からして無理だろう。彼女は僕を嫌っていた。僕が来るまで彼女は雷光さんと二人きりで、彼女の中で幸せな毎日は僕が壊したと思っている。彼女の視点ならばそう感じるのも仕方ない事だろう。けれど、ずっと前から僕は凜さんが好きだったのに。彼女が僕の方を振り向く事はないと知りつつも、この無謀な恋は冷めずに今も燃えたままだ。雷光さんしか見えていない彼女の視線は、雷光さんがいなくなっても尚雷光さんから逸れる事はない。寧ろ強くなっている。雷光さんの面影から逃れようとしている風ではあるけれど、それでもやはりまだ何処かに雷光さんを探している。このまま見たくないものは見ないままにして、いっそ彼女が盲目になってしまえばいいと思った。そして何も見えない世界、最早世界中で彼女の名前を呼ぶのは僕だけなのだ。彼女がこの狭いアパートの一室から出る事は無いのだから。僕が呼んだ名前に反応した彼女が、それに応答する。素晴らしいじゃないか、これこそ求めていた世界だろう。雷光さんには申し訳ないと思うが、でもこの喜びを抑え切れないのもまた、事実。いつか彼女の瞳が僕だけを捕らえて離さなくなればいいと思っていたが、それが叶ったのは意外にもすぐだった。彼女がこの先もずっと変わらずにこのままでいたなら、いつか心すら壊してしまうのではないだろうか。他人を想い続ける心など壊れてしまえばいいと、そう思った。













(081227)
























あきゅろす。
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