悲しい記憶は忘れたいですか




辛い過去があり努力する現在があるから明るい未来があるのだと、私が知る誰かは言った。
それは学生時代の友人であったかもしれないし、もしくは先生であったかもしれない。はたまた有名な哲学者がテレビの中で言っていたのを、たまたま私が観たのかもしれない。
誰が言っていて、その人と私はどんな関係にあるのかなどは、この際関係ない。重要なのは、誰かがこんな事を言ったのだという事実(別に証明はなくていい)。

今はその、"辛い過去"にあたる部分なのだろうか。或いは"努力する現在"か。いずれにせよ、"明るい未来"ではない事は確かだ。

現在である事に間違いはないが、努力は微塵もしていない。
ただ呆けたまま、時間が流れていくさまを眺めていただけ。何のことはない。

結局私は恋に生きる女にも仕事に生きる女にも、おしゃれに生きる女にもなれなかった訳だ。おしゃれに興味は元々なかったし、仕事はバイトと形容出来れば上出来だし、恋なら今砕け散った。正に玉砕、塵も残らない。ごめんと謝られても、嬉しくないよ。虚しさが増してずしりと心が重くなるだけ。


「ねえ、雷光」


私は何も勝ち取れなかった。所詮彼にとっての仕事仲間でしかなかった私は、きっとこれからも仕事仲間でしかないのだろう。それが当たり前なのだし実際そうなのだが、改めてそう言われれば覚悟していた通り納得出来ないのが人間の悲しい性。(…人間の部分を、"女"に変えるべきだろうか?)


「それでも今まで通り接してよね。私、ぎこちなくなるのとか嫌だから。」


だって、再認識してしまうもの。玉砕して、もう仕事仲間という関係でしか結ばれなくなった貴方と私を。私は現実を見たくない、情けない女なのだから。















(081007)
それでもいつか貴方が振り向いてくれはしないかと、期待しながら待っているのです。



















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