悪魔の懺悔




※少々グロテスクなので注意!
























私に触れるその手が嫌い。
愛を囁く癖に私の名前を呼びはしないその声が嫌い。
私を見て悲しそうに歪む瞳が嫌い。
つまり、貴方の全部が嫌い。

雪の舞う頃出逢った私達は、また雪が舞う頃別れてゆくのでしょうか。今は、秋。もうじき雪が降り始めて、私と彼どちらかが歪んで先に一方を殺してしまうのでしょう。私は先に歪むのは多分彼の方だと思います。
だってもう既に綻び始めているから、理性の糸が。愛が消え失せるのって、雪が溶けるのと同じくらい早いですね。もしかして、雪が溶けるより早いかも。

彼は私を殴りも叩きも蹴りもしない。自分で誰かを傷付けるのが怖いんだ。
でも私に触れるその手にはいつも力がこもる事を知っている。肩を掴む時、不必要な程強い力が。痛い、と言っても決して離してはくれない。
血が出る程噛まれた事もあるけど、それは泣いたら止めてくれた。

私は貴方の愛が自分に向けられていない事を知っている。もし再び貴方の愛を受けられるというのなら、喜んで悪魔とでも取引をするだろう。死後、魂をあげたっていい。きっと後悔はしない。

もし死ぬなら貴方のキスで窒息死したい。
そうでなくてどんな死に方でも貴方の手でこの息の根を。
生きたまま目を抉り、腹から内臓を引き摺り出されようとも。まだ温かさの残る私の身体を引き裂いてくれても、脳を掻き回されてもいい。
あの、希望は違うんだけど。

楽に死にたいとは言いません。私が貴方にそんな事を言えないから。私はただ貴方の側にいるだけで嬉しかったし、ただ一時愛を貰えたのは最早奇跡ですらあったのだから。
貴方に殺され永遠の眠りについた時、夢でもう一度貴方に逢えればそれで良い。
誰より健気な愛情よ。



そんな事を考えていると雷光は私の髪を掴んで無理矢理にキスをした。嗚呼どうか、このまま私を窒息死させて。そうすれば、私は幸せなまま死ねるから。
微かに離れた唇から酸素を取り込む。
そしてまたしても塞がれたけど、それは長くは続かず、彼は離れた。まだ私を殺してはくれないみたい。醜く老いて死ぬ前に若く美しいまま死なせてよ。願いは虚しく消えて、私は泣きたくなった。鏡と鏡を向かい合わせ、悪魔を呼び出し、願いを叶えてほしい。雷光に殺された後の魂、本当ならば彼自身にあげたいけど、それは我慢して悪魔にあげてもいいから。愛されないならいっそ、悪魔に殺されてもいい。先刻述べたような内容で。好きな人に愛されない苦しみと悲しみに比べたら、生きたまま眼球を抉られるのも内臓を身体から引き摺り出されるのも、さほど辛い事のようには思えないもの。ごめん、ごめんなさい。こんな事を一瞬でも思うなんて、私が悪魔なんじゃないかしら。そんな悪い存在は殺されなくてはならないでしょう。そして彼は、悪魔に魅入られた人間。













(081002)
誰か息の根を止めて下さる?















あきゅろす。
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