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落乱
仙文:詰め合わせ
ツイッターのお題の詰め合わせ 





 息苦しさに目を冷ますと、同室者が俺に馬乗りになって首を絞めていた。
 異様な光景だが正直またか、だ。何が気に障ったんだか、俺に対して嫌な事があるとこんな事になる。
 覚えがないし正直面倒なので、引っ付かんで布団に引き込んでやった。原因は知らんが理由はとっくに分かっとるわ、バカタレが。
『愛してみやがれ』

・・・


 使いの出先で髪紐が切れた。
 懐に予備を持っていた筈だと取り出したそれを見て、道端で暫し固まってしまった。
 無造作な木綿の切れ端に書かれた、道中の安全を願う角ばった字。全く、可愛い事をしてくれる。
 髪を確りと結び、気合いを入れ直した。期待に応えて無事に帰ってやらなくてはな。
『君の気配』

・・・


「全く、どうしようもない奴だ。学習能力が欠如している」
 四徹を越えて昏倒した文次郎をひやりと一瞥した仙蔵が持っているのは疲労回復滋養強壮の為の煎じ薬だし、そもそもぶっ倒れた文次郎を担いで保健室に連れてきたのは仙蔵だ。
 保健室は怪我人と病人の為にあるんだから、イチャつきたいなら部屋に帰れよ。
『ほらみろ、だから言ったじゃないか』

・・・


「…何だ?」
「…何がだ?」
「いや、さっきから見てるだろ」
「見てるな」
「何か用事あるのか?」
「用事があるわけではないな」
「じゃあ何だよ」
「まあ端的に言うとだな」
「おう」
「お前を視姦していたのだ」
「!?」
『頭の中では裸にしてる』

・・・


 文次郎の寝言が酷い。あの低くてよく通る声で「もみのり!」とか「グッドラック!」とか叫ぶ。
 深夜の六年長屋に響くもみのり。飛び起きる事数回、最初のうちは苛ついて仕方なかったが最近楽しくなってきて、特に面白い物は帳面に書き付ける事にしている。
 さて、今夜は何を聞かせてくれるか。
『響く声・グッドラック!・もみのり』

・・ ・


 電車に乗ってふと横を見たら、随分と懐かしい顔が心底驚いた表情をしてそこにあった。
 自分も似たような顔をして、また突然思い出す。
 そういえば最期に会った時、この位の季節に大体この辺りで会おうか、とか言ってた気がする。
 偶然なんだか運命とやらだかわからんが、切っても切れない縁ではあるらしい。

 



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あきゅろす。
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