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落乱
仙文:膝枕

 六年長屋、自室。
 立花仙蔵は困窮していた。先刻、使い事を終えて帰還した同室者である潮江文次郎に、己の膝を占領されているのである。
 普段から寝不足気味であるし、面倒な用事だったようなので疲れているだろうとは思った。
 ふらふらと近くに寄ってきて座ったかと思えば、仙蔵の膝を枕にして眠り込んだ。

 同室者のうえ、一応恋仲なのだから寝顔など珍しいものではない。
 しかしながら、こうも無防備に密着されると、若さゆえかやましい気も起きようというものである。
 とはいえ相手は過酷な任務を終え憔悴している。労ってやらねばという気持ちもあり、二進も三進もいかなくなっていた訳である。

 ぐだぐだと逡巡している間に、結構な時間がたっていた。
 いくら鍛えていると言えど、人の頭は存外重い。じわりと痺れてきた足に、いい加減落としてやろうか、と思い文次郎の頭に手をやると、気難しそうにしかめられた眉がふ、と緩む。むにゃむにゃと何がしかを言うので顔を近づけると、不明瞭な言葉に混じって、仙蔵、と呼んだ。


 力を入れかけた手を柔く撫でるだけにとどめ、軽く溜め息をついた仙蔵は、文次郎の眉間に一つ口付けを落とした。


    夢で逢いましょう




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あきゅろす。
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