落乱
綾滝:ピアスネタ
ブログのピアスネタをちょっと煮てみた。
滝夜叉丸の耳にピアスを開ける。ピアスホールが無かった滝夜叉丸にピアスを渡したのは自分なのだから、彼にそれをつけるのは自分がやるべきだ、と至極当然のように考える。
綾部喜八郎は大概そんな奴である。
平滝夜叉丸に関する事には、概ね自分が関わるべきだと思っている。
そんな訳で、現在滝夜叉丸は喜八郎の部屋で、耳に氷嚢を押し当て、己に迫り来る鋭い針におののいていた。
「そ、それで開けるのか?!挟む奴じゃなくて?」
「こっちの方が後で楽なんだよ。怖いの?」
蒼白な顔色で頬を引きつらせる滝夜叉丸に、あっけらかんと喜八郎は言い放つ。
半分がプライドの塊で出来ている滝夜叉丸を煽るには充分すぎる言葉で。
「なっ、そそそんなわけ無いだろう!さっさとやれ!」
いとも簡単に乗せられた滝夜叉丸が啖呵を切った直後に、喜八郎は普段のもっさり加減はいずこへやらという速さで、滝夜叉丸の耳元に移動していた。
思わず身を引いた滝夜叉丸の耳をひっ掴み、
「変な所に刺したら大変だよ」
全くの無表情、無感情である。
ぴくりとも動かなくなった滝夜叉丸を見て、黙っているとまるで作り物のようだな、と喜八郎は思う。
普段はこれでもかと言うほど喋って動いて、全力で生きているというのに、ふとした拍子にその身体に継ぎ目が走り、物言わぬ贋者になるのではないか。
喜八郎は、そんな些かに幻想じみた杞憂を持て余す事がある。
自分の思考になんとなく苛ついた喜八郎は、手に持った鋭利な針を、予告無く滝夜叉丸の耳に突き刺した。
「……っ!」
一瞬びくりと肩を揺らした滝夜叉丸に構わず、無遠慮に針を動かし、赤いガラス玉が付いたピアスを埋め、血と軟膏を拭い、留め金をつける。
「終わっ「この粗忽者! もっと気を使ええ!」
滝夜叉丸を見ずに、吐き捨てる様に終了を告げようとした喜八郎の下顎に、惚れ惚れとするようなアッパーカットが繰り出された。
軽く吹っ飛んだ喜八郎が見やると、肩を怒らせ息を荒げた滝夜叉丸が、開けたばかりのピアスホールから血を流しながら身振り手振りを交えて喜八郎に説教していた。
人の耳に穴を開けると言うのになんだあの荒さは、から始まり、この美しい私の耳になんて事を、を通過し、ぐだぐだといつも通りの自慢話を展開する滝夜叉丸を見て、喜八郎は深く息を吐いて、笑った。
杞憂――或いは焦燥感
ぐだぐだぐだぐだ――なんだ喜八郎、この私がわざわざ説教をだな――
うん、滝夜叉丸が好きだなと思って
な、……な、にを…っ…
あと、血がたれてるよ
なんだと!? うわっ、ティッシュティッシュ!
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