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落乱
綾滝:不機嫌な綾部


 基本的に綾部喜八郎という人間は楽天家である。
 自分が興味が無いと思った事柄に対して深く考える事もなく、主に楽しいか否か、必要か否かの選択肢で思考している。

 しかし数ヶ月に一度ほど、普段必要なとき以外まとまらない思考が暴走を起こし、沈み込む事がある。

 常に不機嫌、無気力で他人にとっては迷惑極まりない状態は、たいがいは一日ほどで回復するのだが、稀にこじらせた場合、最も被害を被るのは同じ学級であり同室者の平滝夜叉丸だ。

 しかしその滝夜叉丸も、機嫌の悪く何もしない喜八郎の世話を口うるさくもなにくれとなく焼いてやるので、不満は無いらしい。


 そしてまた今回も、滝夜叉丸は何がしかの理由で思考をこじらせた喜八郎の頭を膝に乗せ、緩やかに髪を梳いてやりながら、穏やかに自慢話を聞かせている。

 とても不機嫌な相手に話すような内容では無いのだが、喜八郎は逃げるでも黙らせるでもなくじっと横になっている。
 無気力が故が、相手が滝夜叉丸だからなのかは、喜八郎にしかわからない。

 髪を梳くのが終わると、とうとう回りすぎるほどによく回る口を閉じた滝夜叉丸は、優しく喜八郎の背を叩きはじめる。
 親が子供を寝かしつけるようなそれに、喜八郎はすっかり意識を手放して、滝夜叉丸の足と膀胱が限界を迎える頃には、喜八郎の機嫌はもうさっぱりと治っている。


   ないてわらって
   おやすみなさい




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あきゅろす。
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