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スキスキスキ!(B)


朝食は焼きたてのスコーンに紅茶を付けて。皆からは人間臭いと言われるけど、こうやって穏やかな朝の食卓を囲むのは僕の至福のひとつでもあった。

「ねぇ***、アナルセックスってそんなに気持ちいいの」
「へっ?」

だから、突然そんなことを言ったリジェネの言葉を瞬時に飲み込めなくて、つるりと手からリンゴジャムを付けたスコーンが滑り落ちた。横で紅茶を飲んでいたブリングは眉ひとつ動かさずに落ちたスコーンをナプキンに包みジャムを拭き取る。

「なっ、ななな、なっ…!!リジェネ、何言って…?!」
「だって***はブリングとディヴァインと毎晩セックスしてるじゃないか」
「まっ…毎晩じゃない!!」

毎晩あんなにされたらさすがの僕も死んじゃう…ってそうじゃなくて!

「人前でそう言うこと言っちゃダメ!」
「えー。いいじゃない、どこぞの生娘じゃないんだし」

けろりとして言うリジェネに言葉も出なくて、とりあえず落ち着くために紅茶に手を伸ばす。鼻をくすぐる柔らかい香りに思わずほっと息をついた。

「で、気持ちいいの?」
「ゴホッ!!」

気管に入った液体を吐き出すために激しく咳き込む。カチャンと乱暴にカップを机の上に置くと、ブリングが無言で背中を擦ってくれた。涙目になりながらリジェネを見れば、相変わらず涼しい顔でミルクティに口を付けている。

「な…何でそんなこと聞くの」
「んー、興味本位?」
「………」

ニヤリと笑ったリジェネに、実質彼が僕をからかって遊んでいるのを悟った。できるだけ冷静を努めて、僕は新しいスコーンにジャムを塗る。今度は落としても大丈夫なようにお皿の上で。

「気持ちいいの?」
「…別に」

ここでのったら負けだ、と自制しながらスコーンを囓る。少し冷めてしまったけれど、ほんのり甘くていい感じだ。

「あははっ、ブリングはテク無しなんだね!」
「ッッッ!!!」

辛うじて吐き出すのは耐えた。口許を押さえながら机に突っ伏して、何とか口の中のものを飲み込む。

「!」

顔を上げて見ると、心なしかブリングが悲しげな顔をしている。にやにや笑ってるリジェネなんかこの際どうでもよくて、両手をぶんぶん振りながらフォローの言葉を叫んだ。

「ちっ違うよブリング?!」
「…あぁ」
「今のはリジェネがしつこいからで…」
「無理しなくていいよ、***?そりゃ確かに男のテク無しはインポより質悪いけど」
「リジェネは黙ってて!!!」

ひー、と僅かに涙目になりながら何て弁明すればいいのか、無駄に良く造られているはずの頭をフル回転させて考えるけど思い付かない。完全にパニック状態だ。もう麗らかな朝の一時なんて吹っ飛んで、あぅあぅと言葉にならない音を漏らしながらブリングの袖を掴んだ。やばい、本気で泣きそう。

「…気にするな」

ぽん、と頭を撫でたブリングは僅かに微笑んで、目許にキスをするついでに涙を舌先で拭っていってくれた。

「あーあー。朝からイチャつかないでよ」

結論が面白くなかったらしく、リジェネが唇を尖らせて野次を飛ばす。元を正せば…!とリジェネを睨めば、にっこりと笑って紅茶のカップを置いた。

「そんなにイイなら今度僕ともしようか?」
「駄目だ」

絶句した僕よりも早くブリングがそう言って席を立つ。皿にいくつかスコーンを取って僕の手を取ると、呆れたようにリジェネに視線を向ける。

「***は俺たちのパートナーだ」
「ブ…ブリング…っ!!」

今!今、凄い時めいた!
食堂を出て私室に向かいながら、僕はブリングの腕に抱き付いてにまにましてしまう。口数の少ないブリングだから、あんな風に言ってくれるのは稀だ。自然と足取りも軽くなる。僕よりも高い位置にあるブリングの顔を見上げると、彼は僅かに困ったように呟いた。

「…満足させられるよう、努力する」
「エッ」

案外気にしてたらしい。少し照れたような、ヘコんだようなブリングの顔にキュンときた。でもこれ以上頑張られたら僕死んじゃう…。

(あー…でも、ブリングたちとなら間抜けだけど腹上死もいいかな…)

こんなこと思っちゃう辺り僕末期。イノベイター失格。でもしょうがないよね、末期なのは自分がよく知ってます。

「…頑張ってね」
「あぁ」


この後いやに張り切ったブリングにそれこそ本気で泣くまでにゃんにゃんされて、帰ってきたディヴァインまでそこに加わっちゃって本気で死ぬかと思いました。いやほんとに。無責任なことは言うもんじゃないよね!



(おバカイノベイターの日常)

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