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クラック(グラハム)


「暗殺なんて…いいご身分だなぁ」

規則正しい機械音が響く病室の中、思わず呟いた俺の声は予想以上に響いて聞こえた。治療用のカプセル越しに見たグラハムはぐるぐると包帯を巻かれ、繰り返される小さな音だけが彼の命を物語る。
グラハムがこんなことになっていることを聞いたのはほんの数時間前。実際にグラハムが暗殺されかかったのは3日も前だ。軍の機密とか諸々もあるんだろうが…たまたま軍上層部のお偉いさんと食事をして、その時話題として提供されて初めて知った。多分、彼に聞かなかったら俺は少なくとも1週間、下手したら1ヶ月以上知らないままだっただろう。

(ビリーのやつ…言ってくれたっていいじゃないか)

薄情な技術顧問を心の中で詰るが彼とて軍属だ、仕方がないだろう。

(静かなグラハムってパーフェクトだと思ってたけど…)

よく冗談半分に黙って動かずに横に立ってればいいと言ったけれど、それとこれとは話が違う。開拓時代のアメリカンのような臭い台詞を糞真面目に語る男がグラハム・エーカーという男だった。静かなグラハムなんて、正直気持ち悪い。

「早く起きろよ、グラハム…」

お前のせいで刻一刻と予定がキャンセル延長を繰り返してるんだ。
カプセルの上から疑似的に手を重ね、包帯の隙間から見える閉じられた瞳をじっと見つめる。綺麗だと思った新緑よりも鮮やかな瞳は、まだ見えない。





(死んだら、やだなぁ…)
(080605)


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