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僕にも構って(アレルヤ)


『君、英語分かる?』

何を問い掛けているのかは知らないけど、酷く優しい声だと思ったのは確かだった。僕の目線に合わせるためにしゃがんだその人は東洋人らしいシルクのような黒髪と、東洋人にしては白い肌を持っていた。

『彼は中国語を話します』
『あいあい、中国ね』

僕を連れて来た白衣の大人(いけすかねぇな、あの服)(そうだね…)と何か言葉を交わして、その人はまたにこりと笑みを浮かべて僕を見た。

「俺の言ってること分かる?」
「、」

突然聞き慣れた言語で話し掛けられて目を見開く。流暢な中国語に感じたのは親近感より危機感だった。

(この人たちも…?)

超人機関の人間?

「警戒しないでよ、だって君英語分かんないんだろ?」
(信用すんなよ)(分かってる)

笑顔なんて信用できない。笑顔は相手を騙すのに一番手っ取り早い方法だ。

「今日から君のサポートをする****・ハプティズムだよ。よろしくね、"アレルヤ"」


***


(懐かしいね)
(何が)
(****と初めて会った日を思い出してたんだ)
(忘れたな、ンな昔のこと)

寝起きのまどろみの中ハレルヤに声を掛ければ、ハレルヤは分かってるくせにとぼけてみせた。もう何年前だろう?CBに入ってすぐだから…ハレルヤの言う通りずっと昔だ。当時中国語しか分からなかった僕にCBの公用語である英語を教えてくれたのが****だった。英語の分からない新人を教育するのが****の仕事なんだそうだ。

(****とは何年くらい住んでたっけ…?)
(2年かそこらだろ)
(案外長かったね)

もっと短く感じていた。所謂楽しい時間は早く過ぎるってやつなんだろう。
そう、****と過ごした時間なんて730日程度なんだけど、その730日は驚くくらい密度の高い日々だった。
食堂へ向かいながら彼と過ごした日々を思い起こし、何だか懐かしさと同時に寂しさを覚えてしまう。今はもう独り立ちして、****は別の子のサポートをしていた。

『こら、刹那!待てって!』
(あれはどこの言葉なんだろうね)

さぁなと返すハレルヤと、見知らぬ言語で前を歩く少年を追いかける****に笑みを浮かべながら思う。僕に気付いた****は少しだけ僕に手を振って笑うと、すぐに小さな少年を追いかけていった。

(寂しいんだろ)
(寂しくなんかないよ…)

ただちょっとだけ、あの名前も知らない子供に嫉妬してる。****とは一人暮らしを始めてからも親交があったけど、****が彼を担当するようになってからはそれもめっきり少なくなった。仕方ないって分かってるのに…僕はまだまだ子供だ。

(早くあの子が独り立ちするといいな)
(ケッ)

ハレルヤはそう言うけど本当はハレルヤだって寂しがってる。僕は心に抱えたモヤモヤをハレルヤと共有しながら、小さくため息をついて子供のような小さなわがままに蓋をした。





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