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猫のきもち
「猫になったマカは可愛いと思うのね。だ、か、ら、猫になってみにゃい?」
ソファで本を読んでいたら、にこにこ顔のブレアが話し掛けてきた。
「はぁ!?」
口を開けるのと同時に、本物の猫に変えられた。手が肉球になっている。
こっちの意見も聞かずに猫にするなんて、全くブレアは何を考えているんだろう。
「にゃはー☆やっぱ可愛いにゃん。どう?たのちい?」
ぜんっぜん楽しくない!と言ってみるけど、ただの威嚇で終わった。
姿形、声まで全て猫に変えてしまったらしい。
「んじゃ夜のお仕事行ってきまーす!キャットライフ楽しんでねん☆」
こらー!置いてくなー!と言うつもりが只のニャーニャーしかならなくて虚しくなる。
あぁー、どうしよう。これ…
ソファの上で途方に暮れてると玄関から扉の開く音がした。
「今帰ったぞー」
げ、ソウル帰って来ちゃった!ますますやばい。
とにかく、ソウルにブレアの事を話さなくちゃ。
ソファから飛び下り、リビングに入ってきたばかりのソウルに駆け寄った。
「ん?ブレアの友達か?」足下でぐるぐる回る私に気付いたようだ。
違う!私だよ!マカ=アルバーン!といくら言ったところで所詮猫。
全てニャーニャーニャーニャー。
私の気持ちを知ってか知らずか、ソウルはしゃがみこみ目を細め愛おしそうに見つめてくる。
普段は見せない顔に胸が、どきっとするのが分かった。
すっと手を差し出し頭を撫で、
「マカもお前みたいに素直ならいいのにな」
何言ってんの!?ソウルの奴!擦り寄りを勘違いしているらしい。違う!気づけー!
「マカ、愛してる」
いーやー!はずい!恥ずかしすぎる!逃げたい逃げたい!逃、げ、た、いいい!!!
ひょいと抱き上げられ逃げる隙もなく鼻にちゅっと軽くキスされた。
そのとたん、ボワンと煙と共に視界が開け目の前には、ぽかんと口を開けたソウルの顔。
「え!あ!?マカ!?」
「そうだよ!なんでもっと早く気付かないのよ!バカ!」
元に戻った〜!ホッとしたのも束の間、ソウルが私の頭を恐る恐る指差す。
「え、なになに!?」
自分の頭にそっと触れると今までにはないものが、そこにはあった。
耳だ。しかもピンと立っている。
「ええあああ!!?」
立ち上がると、オシリにも違和感がある。触ってみると、そこにもあった。
尻尾が。
「うぎゃあああああ」
女の子らしくない叫び声だな、とか明日から学校どうしようだとか今日の夕飯当番とか色々なことが頭の中をぐるぐる回る。
部分的に猫なんて、いっそのこと猫のままが良かった。
相当パニックになってたんだろう、ソウルに両腕を掴まれて我に返った。
「おい!しっかりしろよ!耳と尻尾が生えただけじゃねぇか」
「だってだって、こんな姿みっともない!ふわぁぁあ〜…」
なんとも惨めな気持ちになり涙がポロポロと溢れてきた。
ソウルはよしよしと頭を撫で、きつく抱き締める。

「俺はお前のパートナーだ。それは変わらない。なにがあってもっ…!」
最後の方は笑い声になっていた。
ゲラゲラと腹を抱えて笑ってやがる。
コンノヤロー…人の不幸を…。
特大のマカチョップをお見舞いしてやろうと本を構えた時。
「待て待て、ブレアが何か置いていったみたいだぞ」涙を拭いながら、手で制止の合図をする。
ソウルの奴、涙まで流して失礼な奴だ。
テーブルの上にちょこんと箱が置かれていた。
蓋の上にはブレアの置き手紙付き。
『困ったら使ってねん☆』

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