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幽霊男子 優等生君の場合@


後悔してからじゃ遅い、という言葉があるけど。
やっぱりそういう言葉があるって事は後悔してから大体を気付くからだろう。

「……はぁ」
「元気出して藤澤君」
「……言えば良かった」
「誰に?」
「……アイツに」
「何て?」
「…………」


それは分からない……けど、何かを。
何かを、言っておけばよかった。
事故に合って幽体離脱するくらい無意識に後悔したんなら、言えば良かったんだ。
その後悔した、言えなかった事を。


「次は会えると良いね、藤澤君」
「次なんて、あってたまるかよ」
「それがあるんだよ」


微笑んだ声に俺が死神君の顔を見たのと、じゃあね、と手を振る死神君はほぼ同時だった。
途端に、身震いするような感覚。
掴まれたように苦しくなる心。
嫌な予感がした。

勘弁してくれよ、本当に。



ーーーーー


ピタッと額に冷たいものがあたった。

「っ!」

久しぶりに生身に触れられている感触に驚いた俺は、ハッと目を開けた。


「あ、和起きた?」
「…………か、ず?」
「和、大丈夫?」


優等生みたいな好青年は俺を和と呼び、見下ろしていた。
優等生君の手にはタオルがあって、俺自身はと言うと今の身体が熱く火照っていて怠いのを感じていた。


「体調悪いなら言ってよ。心配したじゃん」
「……ごめん」


この様子だと和というこの身体は多分熱があって倒れたのだろう。
それを優等生君に看病してもらっているんだ。
優しいな、こいつ。
この様子だと友達なのかな。


「ちょっと使う分量間違えたかな?」
「………ん?」
「薬」
「……薬?」


風邪薬の分量を間違えるなんて、珍しいな。
ましてこんなに優等生な雰囲気なのに。
実は天然な奴なのか?


「身体熱い?ごめんね、飲ませすぎたみたい」


いや、待て……なんかおかしい。
言ってる順番が、おかしいだろ。


「倒れる程なんて、そんなに効くんだね、これ」
「……え?」


錠剤が入っている瓶を見せながら微笑む優等生君に対して俺は疑問しか浮かばない。
どういう事だ?
だから、言ってる事逆じゃないのか?
倒れるから、効くんだろ?違うのか?



「少し触るだけで意識飛ばすなんて思ってなかったよ」


楽しそうに笑う優等生君。
おいおい、君は何を使ったんだ。


「……何、使ったんだよ……」
「え?気付いてなかったの?」


心底不思議そうに言われ、どんな状況でその風邪薬じゃなさそうな分からない薬を盛られたのか謎に思った。
そんなにあからさまに薬を与えられたのか?


「媚薬的なものだけど?」


マジかよ、あるんだ。
てか、使っちゃう人いたんだ。


「……倒れたのは?」
「気を失ったから」
「……気を失ったのは?」
「薬が強くて触ったらすぐにイッたから」


もう嫌だ、こんなの。
頭を抱えて会話の内容を忘れたかった。
優等生君から聞かされる衝撃的な事実に他人事だけ他人事じゃない俺は耳を塞いで帰りたくなった。
帰れないけど……。


「和、体調悪かったの?」
「……分かんね」
「なら、本当に効き過ぎただけ?」
「……分かんねぇ」


だって、知らないんだ、本当に。
だって今身体が熱いのは飲まされた媚薬のせいかもしれないし、本当に熱でもあったのかもしれないし。
そんなの、和じゃない俺には分からない。


「……ちょっといつもより生意気な和には、お仕置き、かな?」
「っ!」


だからさ、優等生な雰囲気と顔でそんな事言ったら駄目だと思うんです。

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あきゅろす。
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