拍手御礼小説
幽霊男子 強面男子の場合@
「中野!」
「へ?」
「何寝ぼけてんの?早くやるぞ」
少し意識を飛ばしたと思ったら、視界に飛び込んで来たのは可愛い死神くんでも無く、見知らぬ学生服を着た強面男子。
申し訳ないけど、君誰ですか?
「やる、って何を?」
「え?マジで中野寝ぼけてんの?」
いやいや、だって俺中野じゃないから。
藤澤だから。
何か記憶にある本当の自分の身体とはよく似てるけど、俺にこんな顔の知り合いはいないからさ。
「寝ぼけては無いけど……」
「まさか授業出たいとは言わないだろ?」
「それは、言わないけど……」
俺もよくサボってたし。
て事は今授業サボってるのか、お前は。
にしてもこれは、もしかして他人の身体に精神だけ入ってるとか?
俺今幽霊だし。
違う名前で呼ばれてるし。
きっとそういう事だよな?
「ならやろうぜ」
「いや、だから何を?」
「何って……セックス?」
「は?」
え、同性ですよね?
「ん?何驚いた顔してんの?さっさと脱げよ」
「は?いやいやいや……え?マジで?」
「あー何?焦らしプレイ的な?要らないからそういうの。俺そういうの萌えねぇよ」
違ぇよ!誰が焦らしプレイだ!
俺はそういうのは好きなやつとするって決めてるんだよ!
「でもお前の身体は全部好きだし燃える。お前もそうだろ?」
「っ、待っ」
強面男子は中身が俺だとは知らずに中野と思っている中野の身体を探り、早々にズボンの中に手を忍ばせて俺のモノを握った。
いや、細かく言うと中野のだけど。
「待たねぇよ」
「いや、っ」
後ろから耳許で囁かれてなぜか背筋がゾワッとした。
それは悪寒とかの類じゃなくて、良いもので。
この強面男子はいつもこんな風に中野としているのか?
中野はそれを受け止めてるのか?
「俺の事大好きな癖に拒んでんじゃねぇよ」
「……好き?」
「そ。大好きだろ?」
そっか、中野はこいつの事好きなのか。
それなら別にこのまましても良いのか?
どうせ俺の身体じゃないし。
初めてでも無さそうだし大事にする必要無いよな?
……………って、いやいや!
身体は中野だけど中身は俺だから!
精神的に犯されるのは俺だから!
「っ、あ……」
「ほら、もう勃ってきた」
「や、これは……」
気持ちは抵抗してて突き飛ばす気はあるのに身体が動かない。
強面男子の手淫に、俺のであって俺のじゃないこの身体は簡単に熱くなってきて、力が入らなくなってきていた。
どんだけ中野はこいつと今までこういう事をしてきてるのか。
でも、好きな奴とだから、きっと中野は幸せだよな。
「ほら、早くイケよ。そしたら、次は俺な」
「んぁ……待っ、そんな早く、動かしたら……っう」
目を瞑って刺激に耐えていたら妙に五感が鋭くなる。
下着の中で擦れて濡れている音と、自分の洩らす聞いた事の無い声が耳によく聞こえて恥ずかしくなる。
なんで俺、こんな知らない奴に触られて気持ち良くなってんだろ。
中野の身体だから?
でも、俺自身、良いと思ってる?
いや、まさか……嘘だろ?
「や、ぁ、……も、ダメ……」
「良いよ、イケよ」
「っふ……ぁ、ふっ……んぁぁぁ」
背中を強面男子に預けてもたれかかり、慣れていない刺激に俺は下着の中で激しく精液を出して、溢れる液体に気持ち悪くなる。
早く脱ぎたい。
けど、達した直後の脱力感で身体が重たい。
「……あ……ふっ……」
「中野、次」
次、って何?
当たり前のように言われる指示に、俺は振り返って強面男子を見つめた。
「お前だけ気持ち良くなるつもりか?」
「……お前のも……するの?」
「当たり前だろ」
「……分かった」
確かに俺だけしてもらったら不公平かもしれない。
まぁ扱き合いくらいなら良いだろ。
俺は気持ち悪い下着を我慢しながら、強面男子のベルトに手をかけた。
「噛むなよ」
「…………え?」
かけられた言葉に俺は顔を上げる。
え、今からしてやろうとしてる俺に向かってその言葉を言うって事は、まさかフェラ?
……手じゃダメなの?
「お前……噛むつもりだったのかよ」
「いや、違うけど……」
「いつも咥えさせろって言うけど、油断させといて急に噛むとかは止めろよ」
おいおい中野くん、どれだけ好きなんだよコイツの事。
そんなに好きなの?大好きなの?
そんなに咥えたいんですか?
「………俺、下手だけど」
「知ってる」
恐らく君が知ってるのは中野くんの事で俺の事じゃないと言ってあげたかった。
けれどもうここまで来たら仕方がない。
幽霊の俺が中野くんの身体に入ったのも何かの縁だし。たぶん。
中野くんが好きな彼との相手を俺は今邪魔してるわけだし、仕方ない。たぶん。
フェラなんてして貰った事も無ければ、してあげた事も無いけど、身体の持ち主の為に頑張ってやろう。
どうせ逃げられないんだ。
覚悟を決めよう。
「んぐっ」
俺はまだ大きくなっていない強面男子のそれを、口に咥えた。
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