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拍手御礼小説
幽霊男子 プロローグ


もしも、もしも透明人間になれたら何がしたい?

そう聞かれたら、みんな何かお金盗むとか、芸能人に会うとか、普段出来ない事するって言う奴が多いと思う。

俺は特に変わったのじゃない。みんなと一緒で、よくあるつまんないやつだ。

好きな奴の傍にいる。

ただそれだけで良いんだ。


まぁ、俺の場合、透明人間になったらじゃなくて、幽霊になってしまったんだけど。


「あー、さて、と」


どうしようかと空から地上を眺めて、不思議な浮遊感に浸ってみる。


「ちょっと何してんの!」
「……はい?」


同じく空に浮かんでる可愛らしい男の子は全身真っ黒な服に包まれて、金色に光る鎌を持っていて酷く不釣り合いだった。
そんなよくある死神みたいな男の子は俺を指差して叱る。
とは言っても、そもそも俺は自分でも何してるのか分からないんだよな。


「あ!君見たことある!」
「へぇ」
「君死んでないんだから戻らなきゃ!体がダメになるよ!」
「あぁ、そうですか」


そうか、俺死んだわけではなかったのか。
それさえ気付いてない俺だから、戻れとか言われてもサッパリだ。


「何で幽体離脱しちゃったの?」
「いや、俺が聞きたいんだけど」
「君名前なんだっけ?カッコイイから上から見てて覚えてるはずなんだけどな」
「……はぁ」
「あ、そうそう!藤澤くん!」
「あー、そうだけど」
「で、藤澤くん、たぶん何か理由があって精神から抜け出したと思うの。だから、早く戻ってね」


いや、色々説明ぶっ飛ばしただろ。横着するな、教えろ。


「戻るとか言われても知るかよ。身体がどこにあるのかも知らねぇしさ」
「なら、今一番何がしたい?」
「何って……」


え、そんなの……
”好きなあいつの傍にいたい”


「願ったね、藤澤くん」
「は?別に願ったわけじゃなくて、普通に頭に浮かんだだけ……」
「君のその想いが成就されたらきっと戻れると思うよ?良かったね!」


可愛い笑顔とキラキラ光る鎌を見せて言う死神くんは嬉しそうで。
そもそも俺としては、願ったその好きな奴が誰かも分からないんだ。

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あきゅろす。
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