◆SS ■鏡 求めてる世界に行きたくて触れたくて。 どれだけ時を経ても近付く事が出来ない。 この隔たりが無くなったら、そっちに行く事が出来るのだろうか。 ===== 「好きです!大好きです!」 「……気持ち悪い、消えろよ」 誰もが羨む告白という物も俺は大嫌いだ。 俺にとって、告白は好意という意味合いを持っていないから。 そんな俺には、友人はいない。 「また居んの?お前」 「……体調不良です」 「はっ、どこがだよ」 「……本当に、無理なんだよ」 「はいはい」 いつも逃げ込むのは保健室。 教室にいたら気分悪くなる。 文句言いながらでも、保険医は俺がここに居る事を許してくれる。 俺に何も求めないし、誘っても来ないし襲っても来ない。 だから、安心する。 「皆、先生みたいだったら良いのにな」 「無理だろ。お前の容姿だと」 「でも先生は俺を誘わないだろ?冷たいし」 「それはほら、仮にも教師だから」 「……じゃあ、俺が今まで出会った奴はみんな教師じゃなかったのか」 「……ノーコメント」 「ありがと」 変な慰めも、何もいらない。 好意なんていらない。 そんなのはどうせ、綺麗な感情じゃなくて、どうせ俺とヤりたいだけでしょ? 「……ごめんな」 「何で先生が謝んの?」 「いや、でも、ごめんな」 謝るくらいなら教えてください。 俺は本当に外見だけの価値しか無いのかな? 誰も俺自身を見てくれないのかな? 俺には、ヤるしか価値が無いですか? 「むしろ俺が謝らないと。何もお礼してないから」 「……そんなの、いらないから」 「本当?ならこんな見た目でこんな身体に興味出たら言ってよ。先生になら良いよ」 「………そしたらお前は、ここにも来なくなるだろ?」 その問いにちゃんと答えるとしたらYESだ。 でも、NOとも言えるかな。 だって、ここもその他大勢と一緒になるだけだから。 「そしたら、教室に戻るかな。普通に学校に通うよ。きっと先生にも会える」 「何して過ごすんだ?」 「……皆と仲良くするかな。遊びに誘われたら一緒に遊んで、先生から補講しろって言われたら大人しく参加して教わる」 「俺とは?」 俺の言葉の真意が分かっててその質問をするのかな? つまり、皆と一緒になるのかな? 「これからの、先生次第かな?体調不良で身体を見てもらうか、お説教を受けるか、かな?先生は冷たいから、やっぱ厳しいかな?それとも、優しいかな?」 「……そんな風に、無意味に人を誘うなよ」 「そう見えたなら、俺はやっぱそういう人間なのかもね」 「俺は絶対、お前には手出さないから」 「…………うん、ありがとね」 例えその言葉が真実でも嘘でも、大多数にとっては俺はやっぱりそういう人間なんだよね。 「あ、あの!好きだ!」 「……そっか。で?どうしたいの?」 「それは、その……」 大多数にとって俺はヤりたいだけの存在。 与えてくれる好意は欲情から来るかも。 俺にその価値しか無いのなら、どれだけ消えて欲しいと思って応えるしか無いじゃんか。 「…………ヤろっか」 艶のある声で告げたそれは、君が求めてる俺の想像と一緒でしたか? Fin... [*前へ][次へ#] [戻る] |