◆SS ■天使な君 ※暗い ===== ねぇ、俺を見て……。 ―――お願いだから ===== 「っ」 息を呑む程に美しい君が、微笑んだ。それはもう本当に呼吸を忘れるくらいに綺麗で美しくて、そして妖艶で。 性別なんか感じさせない。 男なのか女なのかも分からない。 天使みたいな君。 俺なんかに触れたらその妖しくも透明で儚い光が汚れるんじゃないかと思うくらいで。 その綺麗さと言ったら、俺の語彙力では到底伝えきる事は出来ない。 「っく」 そんな君が幸せそうに微笑んで、俺の首に手を添えた。 両手で包み込んで温かい体温で首筋を暖めて守ってくれる。 あぁ、本当に君は天使だな。 俺にとってそれは施しであり優しさで。それを拒む理由なんてこれっぽちも無い。 喜んでそれを受け入れる。 もっと、もっとそれを俺に与えて欲しい。 君から貰えるものなら、何だって嬉しいよ。何だって受け止めるよ。 「ぁ……」 君がその美しく整った眉をひそめると白い肌に汗が一滴流れて白い光をその顔にたくさん浴びた。 あぁそれでも、やはり君は綺麗だ。 「……わらって…」 俺の声は君に届いたかな。 君は俺とは違う世界に住んでいるから、届かないかもしれない。聞こえないかもしれない。 でも、届くかもしれない。 だって君は、今こうして俺を優しく包み込んでくれて息も出来ないくらいに美しい光景を見せてくれる。 俺を上から導いて、俺の想いをすべて受け止めてくれてる。 「っ…」 ほら、白い肌に薄い薄い色した形の良い唇を震わせて、頬にはたくさんの洗礼を受けて紅潮させて、微笑んでくれる。 「ぁ……」 それだけで俺は天に召されるような想いで俺もまた君と同じようにたくさんの洗礼を浴びて、優しく美しく汚れない天使の君に想いの丈を伝える。 「っん」 君はこれ以上は俺の熱い想いを受け止めきれないと首を横に振りながらも、強く俺を縋って堪えてくれる。 そして俺の想いへのお返しとばかりにまた綺麗で神聖な洗礼を惜しげもなく俺に与えてくれる。 あぁ君は何と気高く美しくて汚れなき天使様なのだろう。 「っ」 そして俺は、君が与えてくれる強い温もりを全て余すことなく受け止めた。 ーー 部屋に佇む、小さな影。 「………ねぇ、俺を見て。お願いだから」 綺麗と呼ぶには余りにも全身に白濁を浴びすぎた青年が、己の手を見て震えていた。 fin? [次へ#] [戻る] |