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◆Short Novels


「メリークリスマス!!」
「そうだね、バイバイ」
「ちょ、濱本ー」
「近付くな、うざい」
「何でそんな言い方すんだよ、酷いよー」
「酷いのはお前のその見た目だよ」


誰がミニスカサンタのコスプレなんかしてる男子を見て得した気持ちになるのか。
少なくとも俺は無い。
自室に突然現れた佐藤のコスプレ姿を蔑むような目で見て、拒絶する。


「その姿で近寄らないでよ」
「なら、脱げば良いの?」
「お前の目的はそれなの?」


この馬鹿は脱ぎたかったのだろうか。嬉しそうに佐藤は上衣の裾を掴み、僅かに臍が見えるくらいに捲り挙げた。


「俺の目的は濱本に会いたいだけだよ?」
「ついでに会ってヤる所まで、でしょ?」
「うーーん、まぁね?」


クスッと笑って佐藤は濱本が座っているベッドまで乗って来て、首に腕を絡めてくる。
濱本の眼前には安っぽい素材感の赤色のサンタクロースの服。白いボタンもあしらってあるが、引っ張れば簡単に取れそうだ。
よくもまぁ、そんな服を着ようと思ったものだ。
しかも、頼まれてもいないのに自ら。


「ねぇ濱本?脱いだら近寄っても良いんだよね?」
「今お前は脱いでないくせに近寄ってるけど」
「だって濱本が止めないから」
「止めて欲しいの?」
「ううん、嫌だ」


濱本の首筋に顔を埋めて、佐藤は舌を這わせる。
誘っているのか、ただこれだけ近寄って触れる事を許されている事が嬉しくて味わっているのか。どちらかは分からないが、今日はひとまずまだ止めさせようとは思わなかった。


「っ、濱本……」
「人にちょっかい出しながら脱ぐなんて節操ないの?」
「っ、違う、けど……」


鼻息が聞こえる。匂いを嗅がれているような気がして、流石に気分悪くなってきた。
濱本はチラリと下に目線を向ける。


「佐藤、聞きたいんだけど」
「ん?」
「……まず離れてくれるかな?」
「…………うん」


佐藤は渋々といった様子で離れ、膝立ちのまま濱本の前で大人しくする。


「そのおかしな服の下、何か着てるの?」
「……ううん」
「下着も?」
「うん」
「変態だね、お前はやっぱり」


冷たい瞳で言い放てば、佐藤は頬を紅潮させて濱本から目を逸らす。
この単純な佐藤の事だ。おおよその予想はついている。


「今日はあわよくば俺とヤりたかったんだよね?」
「……うん」


まぁ、それは今日に限らずいつもの事だろうが。
何度その試みを失敗しているのか解っているのだろうか。


「家で、1人でシて来た?」
「……うん」
「後ろも慣らして来たの?」
「……うん」


濱本の質問に佐藤は恥ずかしがりながらも答える。身体をモゾモゾとしているが、その原因には気付いているが濱本は触れない。


「さっき、俺に触れたけど、どうだった?」
「……良い匂いがした」
「気持ち悪い」
「っ、ごめんなさい……」
「他は?」
「久々に触れて気持ち良かった……」
「本当にお前は気持ち悪いね」
「っ、濱本……」


何かを訴えるように、佐藤は濱本を見る。何を言いたいのか予想出来るけど、濱本はそれは無視する。


「ここ俺のベッドなんだけど」
「…うん」
「お前は馬鹿で変態で節操無しだから、我慢出来ないとは思うけど」
「………」
「でも、勝手に1人で感じて精液でもこぼしたら許さないよ?」
「っ、あ、濱本っ」


佐藤が前屈みになって涙目になって名前を呼んでくる。


「なに?どうしたの?気持ち悪い」
「っ、濱本……許して」
「何を?」
「っ、その………」
「もしかしてイきそうなの?何もしてないのに?ただ俺の言葉だけで?」
「っ!!」


佐藤は必死に首を縦に振って肯定する。が、そんな事は既に濱本は知っているし正直関係ない。


「救いようのない、変態だね。付き合ってられないよ」
「ごめん、なさい……」


本当に、馬鹿で単純で変態の節操無しで。誰よりも濱本を楽しませる。


「佐藤はサンタクロースでしょ?」
「…え?」
「プレゼントを配る人間が、与えるべき人間から勝手に搾取して満足してるなんて矛盾してるんじゃないの?」
「っ、でも俺」
「本物じゃないって?それとも、俺から何も受け取ってないって?」
「……」


佐藤は限界らしいそれを必死に堪えながら、心当たりが無いと言いたげに濱本を見る。


「何も受け取って無い事は無いでしょ?さっきお前は、俺に触れて、感じたんでしょ?」
「!!」
「違う?」
「あ、でも……」


そんなつもりは無かったと、そんなの理不尽だと言いたいのか。
そんな事を訴えたそうにしていても、佐藤のモノは家を訪ねる前と訪ねて来てからので安っぽい素材ゆえに赤いミニスカートの前を少し濡らし色を変えていた。


「今日はクリスマスで、俺はプレゼントを貰える人間で、お前はプレゼントを与えるサンタクロースだろ?」
「っあ、濱本……」


佐藤の瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちた。


「ちゃんと役割は果たしなよ、サンタさん?」
「っ!!」


あぁ本当に、佐藤のその顔は堪らなく良い。

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