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◆Short Novels



「濱本……」
「うるさい」

学校からの帰り道、佐藤は1歩先を歩く濱本に声をかけた。
勇気出したその一声も濱本に無惨に否定され、発言することを疎まれる。


「……ねぇ」
「うるさい」
「っ」


それでも佐藤はめげずに声をかける。
たったこれだけで心が折れていたら濱本とは付き合えない。
それにむしろ佐藤にとって、濱本のその面倒臭そうな声と対応だけで、背中をゾクゾクさせるには充分だった。

ギュッと唇を噛み締める。
2度声をかけて嫌がられた。3度目はもうない。
会話が出来ないのなら、顔を見ることが出来ないのなら、それならせめて後ろ姿だけでも見て満足するしかない。

触れられなくても良い。
視界に入っていなくても良い。
佐藤の視界に濱本が存在してくれるのを許してくれるだけで充分だ。


「……ぁ」


嬉しすぎて背中を見つめていたら、心なしか下腹部に熱が集まってきているように感じる。
ここまで自分は単純だっただろうか。
というより、本当にこれでは変態と言われても仕方がない。
佐藤は自らに呆れながらも足を止めてそっと浮かんだ予感を確認する為に、視線を落とした。


「発情期の馬鹿犬だね」


瞬間、濱本の冷たい声が頭上から注がれた。
いつの間に、そんな近くに?
それよりどうして体の変化が訪れた本人と同じような速さで気付いてる?
それだけ実は注意を向けていてくれた?


「ぁ、濱本……っんん」


様々な思考を巡らせていると、その可能性に幸福感が溢れてきて、自ら変態だと認めても仕方がないと考える佐藤は敢えなく達してしまった。


「…………もしかしてイッた?」


ビクッと身体を震わせながら恐る恐る見上げた佐藤に対して、濱本は軽蔑の目をする。


「……万年発情期の犬みたいだね。お前の場合は雌犬か」
「ぁ、ごめんなさい………」
「けど、こんな道端で射精するなんて、犬でも場所選ぶからお前は犬よりも劣るね」
「……ごめんなさい」
「メス犬以下の変態。お前は何でも良いし誰でも良いんでしょ」
「ちが、、嫌だ、行かないで」


濱本は佐藤に背中を見せる。
見捨てられたら佐藤は生きていけない。
比喩ではない、事実だ。

佐藤は、力の入らない身体を強引に動かして濱本を追いかける。


「っ、濱本……」


追いかけながら、下着の中で出してしまった精液の感覚に気持ち悪さを感じる。
自分でやってしまったとはいえ、早く脱いでしまいたい。
けれど、このまま濱本に追い付けなくて放置されてしまうのも辛い。
佐藤は、泣きそうになるのを堪えながら濱本を追いかける。
その様子が周りに今の自分がどう見られているか考えられる程、余裕なんて無かった。


「痛っ」


前を見ずに歩いていたら、何かにぶつかり佐藤は立ち止まる。
瞳を開けたらそこには佐藤より前を歩いていた筈の濱本が立っていた。


「あ、濱本……?」
「…………来な」


その一言と手首を掴まれるのは同時で、そこから濱本の家に着いたのはそう時間はかからなかった。



「な、なんで?」


その道中に、佐藤は濱本の背中に何度も問いかける。
なんで、そんなに急いでいるのか。
なにを、そんなに苛立っているのか。
佐藤の様々な疑問を含ませた問いに濱本からの答えが返って来たのは、家に着いた時だった。


「人前で泣くとかふざけてるの?」
「ちが、あれは、っ!!」


生理的に無意識に流れたものだったと弁解する前に、佐藤は玄関の扉に頭を押さえつけられその衝撃に言葉を失う。


「早く脱ぎなよ」


濱本の手によって頭は固定されているが、両手は空いている。
佐藤は大人しく濱本の言う通りに服を脱ぎ始める。
濱本からの行為に抵抗するなんて考えは全くなかった。


「……親は、大丈夫なの?」


けれど、ここは濱本の家でなおかつ玄関だ。
自室ならともかく、第三者の介入が無いか心配になり、佐藤はそこの確認だけは行う。
佐藤は見られても知られても構わないが、濱本が嫌なことはしたくない。


「さぁ?どうでも良いよ」


濱本は心がこもっていない声で言うと、手慣れた手付きで扉に鍵をかける。
静かな家の中、その音が妙に響いたように感じた。


「ねぇ、もう良い?」


会話の間に佐藤は大人しく服を脱いでいた。
ズボンは濡れている下着と一緒に足許までずらし、シャツはボタンをあけている。
濱本はまるで癖のように、頭を掴んでいた手を離して髪の毛を触れた後、その胸元を辿り下半身へと触れる。
その無意識なのか、いつも荒々しい行為の前に一瞬だけ行われるそれが佐藤にとっては至福の瞬間だった。


「っ、濱本の好きに、していいよ、」
「当たり前でしょ。お前の許可なんて求めてないよ。勝手に俺以外の前で泣いたのはお前なんだから」


濱本の手が太股を辿り、いつも濱本を受け入れる後孔へと触れる。


「ねぇ、今慣らしてあげる気分じゃないんだよね」
「ん、良いよ。いれて、ください」
「うん、そうする」


そう言うと、濱本は本当に慣らすことも何かで濡らす訳でもなく、まだ解れていない佐藤の後孔に己のモノを突き入れた。


「あ"あ"あ"ぁぁぁっっ」


その痛みと苦しみの衝撃に、佐藤は激しくのけぞり、そして本日二度目の欲を放った。
ポタポタと、玄関のタイルに白い精液が放たれる。
後で掃除しないと、と佐藤は熱に浮かされている頭でぼんやりと考えた。


「ははっ、変態」


乾いた笑いをした濱本の声は、どこか嬉しそうで、こんな変態の自分でも呆れずに笑ってもらえるなんて自分はなんて幸せなのだろうと、佐藤は身体の中に満ちている濱本の熱を感じた。
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あきゅろす。
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