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◆Short Novels

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「尋人、待って、ぁあ、はっ、んんっ」

騎乗位の意味を為してないと思う。
奏斗は尋人に腰を掴まれ下から突き上げられながら、ひたすら嬌声をあげた。


「王子、だろ?」
「っ、んぁ」


意地悪だ、こいつは。
奏斗はキッと涙目で睨みながらもすぐに甘い声を出した。


「可愛い姫……俺の中でこうしていつまでも一緒にいられたら良いのに」
「はふっ……あ、っ……」


下からの突き上げが止んだと思ったら尋人は奏斗の身体をぎゅっと抱き締めた。
尋人の言ったどこか聞いたことあるその言葉は、さっき奏斗が見た劇の台本の台詞だ。


「姫……好きだ、愛してる……俺の物だけでいて欲しい……」
「…………」


尋人の王子としての台詞に、嫌だな、と奏斗は思った。
こいつはその声で、その表情と熱っぽさを含ませた雰囲気で、その台詞をそこら辺の女子に言うのか、と。
奏斗以外に、嘘でも好きだ愛してると言うのか、と。

演劇部で実力もある尋人にとったら今更な事だけれど。
それでもやっぱり、好かれているという実感が欲しいと思うのは奏斗の我が儘だろうか。


「なぁ、王子様」
「……姫?」


奏斗は、抱き締めるその腕から逃げて、腹から首筋へかけて優しく口付けを落としていく。
まるでこの体は自分の物だと印をつけるように。


「……姫が王子様の物だって証拠、欲しいな」
「……例えば?」


俺は今、姫なんだ。
王子に愛されてる隣国の姫。
王子が好きで堪らなくて、いつも不安に駆られてる。

俺と一緒だな。


「王子様の事忘れられないくらい、熱いの、ここに、たくさんちょうだい?」
「っ」


それはとても扇情的な仕草と声で。
奏斗はナカに埋まってる尋人のモノをそっと上からなぞりながら、囁いた。


「なぁ、ちょうだい?たくさんたくさん溢れるくらい、ちょうだい?姫の事好きなんでしょ?愛してるんでしょ?なぁ、王子様、っ!!」


お願いを言い続けていたら突然塞がれた唇。


「…………ちょっと、黙ってよお姫様」


離れた尋人の口からはさっきの告白の時とは違う尖った言葉。
あぁ怒らせたかな、と思ったのも束の間。
トンと背中を押されて奏斗は尋人を見上げる体勢になった。


「身ごもるくらい注いであげるから……そうしたらもう、俺の物だね」
「……うん、嬉しい」


本当に身ごもったら良いのに、なんて思ったのは姫として感情移入し過ぎたからなのか。
どちらにしても、相当自分は尋人が好きらしい。
悔しい程に。

だってもう、男なのにとか関係なく、尋人を受け入れて激しく突かれて苦しいこの瞬間が奏斗は堪らなく好きだった。


「あっ、はっ、ふっ……あ、んぁぁ……っ」
「もっと、声、聞かせて……」
「あ……いっ……きもち、いっ……」


お互い汗を額ににじませて、お互いの汗が混じり合うくらいにお互いを求め合う。
奏斗の僅かに残ってる理性がふとこんな自分達を馬鹿みたいだと笑うけど、それもすぐに霧散する。

理性を残してたら、ただ互いの快楽だけを追う生産性の無い行為も、演劇の練習にかこつけて非現実的なシチュエーションに乗って悪ふざけするやり取りも、何もかも出来ない。


「っ、あ、やっ、もう、イくっ」
「姫、イくの?」
「ん、イく、出るっ」
「なら先に、俺にお願いしないとな」


尋人の悪巧みしているその顔に、奏斗は背筋がゾクゾクとするのが分かった。
普段の甘い言葉をひたすら吐く尋人も好きだけど、奏斗が一番好きなのはこういう悪い事を要求してくる尋人が好きだ。

役の練習が絡んでないとそういう事が出来ない尋人も変わってるけど、普段よりもそっちの方が好きな俺も相当変わってる。


「あっ、はっ」
「ほら姫……言って?」
「んんっ、ふっ……あ、王子様の、たくさん中に、出しても良いから、だから……姫もイって、良い?」
「……ん、良いよ、イキな」
「んぁぁぁあ、ふぁ……はふっ、」


許可と共に身体をビクンと震わせて尋人と奏斗の腹部をたっぷりの精液で汚す。
その締め付けと達したばかりで余韻を残すその身体に反応して、続けて奏斗のナカに尋人の熱い迸りがそそがれる。


「あ、あ、ナカ、熱い……出て、る……きもち、良い……」
「全部、受け止めてね、お姫様」
「うん、ちょうだい、全部……俺の、もの」


甘い声も言葉も、意地悪な言葉も何もかも俺のもの。
それを実感する為なら、どんな役の練習だって付き合うから。

奏斗はナカに注がれる尋人の熱に幸せそうな顔を見せながら、再び硬さを取り戻した互いのモノに笑みを浮かべた。


ーーーーー


「ほんと、素直で可愛いよね」
「も、止めて……」

演劇の練習に乗じたその行為が終わった後に行われる、恒例の尋人による反省会。

もしかしたら最中の要求よりも、冷静になった思考に理性を飛ばした自分の行為を延々と語られるこの時間が奏斗にとって恥ずかしいかもしれない。

Fin.

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