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◆Short Novels

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今まで篠田が求められるどんな行為に対して抵抗が無かったのは諦めもあったけれど、それ以上に大きな要因は洋介だろう。

初めての相手。
洋介に対して篠田はそんなキラキラした綺麗な印象は無い。
言われても実感が湧かない。

それは記憶の拒絶という意味ではなく、いつが最初だったのかその境界線が曖昧で分からないからだ。
それ程まで、洋介はギリギリな行為を常に要求してくる人だった。

それでも篠田は嫌悪など無く、比較的何でも受け止めていた気がする。
それはやはり、憧れの兄から求められているという気持ちが強かったからだろう。

けどそれでも、初めて犯された日のことは特別な事で。
嫌なその"特別な日"はよく覚えてる。


「……洋介、なんでいつも目隠すんだよ」
「そっちの方が好きだからー、かな」
「学校でも……ダサい眼鏡、させるしさ……」


眼鏡もいらないしコンタクトもしていない篠田にとって眼鏡は飾りだ。
けど篠田は兄からの命令だとダサい黒縁の眼鏡を学校で付けさせる。
そして、2人きりになったら外しても良いと許可を出す。


「俺が好きだからだよ、洋平。嫌?」
「……もう、慣れたよ…」


身体を床に転がされて後ろで手が縛られて苦しいし、視界も布で覆われていて辛い。
でも、それを今更外してくれと頼んだりはしない。
そんな事は無駄だと分かっているから。
何の条件も無く、洋介がそれを外すことは無い事を十分に分かっていたから。


「じゃあ洋平、今日も頑張ろうか?」
「っ…あれ、俺嫌い………あ、あぁっ」
「嘘付きだなー、洋平は」


何をすると言われなくても分かる行動。
それほど習慣的にそれは行われて来た事を伝えるように、悲しくも篠田の後孔は易々と細めのバイブを受け入れた。

自分の慣れが怖い。


「ほら、楽に入った」
「あ、あぁ……んっ…」


なぜか洋介はいつも太めのサイズは入れようとしなかった。
その意図に気づかなかった当時は、それが優しさなのだと思っていた。


「あっ……やっ、はっ…動かすな、ってば…」
「でも動かさないと、洋平には足りないでしょ?」
「んな事、ない、って……ふぁ……はっ…」


リモコンで動かしたりせず、洋介はそれを必ず直接動かして篠田に刺激を与える。
幾度も受け入れてきたそれはそのサイズにはすっかり慣れていて、ナカは十分に解れ切っていた。
ナカに挿れらて違和感を感じるような段階はとうの昔に越えていて、今では後ろで快感を得る事が出来るようになっていた。

それぐらいでは、足りない。もっと。
その上の刺激があること、知ってる。
だから、もっと……。

けど、言葉では拒否する。
言葉に出したら終わりな気がした。


「また嘘ついてる……」
「んっ…あ、はっ…あ、んっ……ダメ、そんな、動かさないでっ……んあぁぁ」
「まだイくには早いよー、洋平」


篠田はビクビクと身体を震わせる。
後ろだけでは足りない。
床にこすれている前も触れて欲しい。

その欲望はもうすっかり膨張していて、先走りをこぼしていた。


「洋介……前、触って……」


篠田は洋介を見上げながら頼む。


「呼び方とー頼み方、違うんじゃないかなー?」
「あぁぁっ」


グリッと奥を容赦なく抉られて、思わず背中が仰け反った。
ついでに耳元に、洋介の声が囁かれた。


「俺、ちゃんと教えたよねー?洋平」
「や…あ……はっ……」


名前を呼ばれる事。
快感を与えられる事。
その同時の責め苦に篠田はもう理性を崩す。

止まらず動かされて内部を犯し続けるバイブ。
弱点を知り尽くしてそこばかり責め続けるその動きに、篠田が音を上げるのはすぐだった。

だってもう、逆らった所で意味ない。
そしたらもう、誰がこの刺激を与えてくれるのか。

洋介しか、いない。


「…ぁ……」
「ん?ほら、言ってみて」


何で言わないといけないのか。
そんなの言いたくない。
なんて思考はもう篠田から消えた。

だって洋介の要求なのだから。
その通りに言わなければならない物だと学習させらていた。


「……兄、さん……お願い、します……俺の前、兄さんの手で触って……イかせて、下さい」
「んー、まぁ許してあげる。俺は別に、洋平にペットになって欲しいわけじゃないからねー。洋平には、やっぱり洋平のままでいてほしいからね」


洋介の優しい声が鼓膜から響く。
あぁ、これでようやく前も触ってもらえる。
我慢しなくて良い。


「あっ……あ、はっ……んっ」
「洋平、俺を見て?」


洋介がそう言うと珍しく達してないのに目隠しを外された。
篠田の眼前には洋介の姿だけが映し出される。


「あっ……兄さん……」
「うん、兄さんだよ」


チュ、と軽い口付けが目尻に落とされた。
その後の甘い甘い微笑み。
そして聞いた事ない、艶のある声。


「今、触ってあげるから。前も後ろも、俺が、してあげる。よく見ててね?誰が洋平をそんな風に気持ち良くさせてるのか」
「んぅっ」


その声から紡がれるのは、まるで暗示のように言ういつもと似たような事。
しかし、篠田はその真意には気付かない。

グポ、と音を立てて篠田の後ろに埋め込まれていたバイブが引き抜かれ、グチュ、と洋介の指が侵入した。
そして半ば同時に、後ろの刺激だけで強引に高ぶらせて先端から白い液体を零している篠田のものを握った。


「やあぁっ…あ、ダメ……っん……兄さん……イく、から……イく、から……はな、してぇ……」


身体を丸めても、前後からの刺激には耐える事は出来ない。
拒否する為の手も縛られて塞がれている。
逃げる為の足を洋介に押さえされていて動けない。

先端からは溜まっていく熱を吐き出したくて、後ろはもっと奥を突いて欲しくて。
それでもより願う欲求は、やはりイきたいということ。

出したい。
このままでは吐き出せない熱が身体の中で回って溶けてしまう。


「まだダメだよ、今日は」
「……え?」


いつもはもう出させてくれるのに、と篠田は潤む瞳で強請るように洋介を見あげた。


「そんな顔してもだーめ。今日からは、ダメなんだよ。洋ー介?」
「……どういう、こと?」


熱に浮かされていた頭が、今までに無い展開に徐々に冷めていった。

ねぇ兄さん。
なんでそんなに楽しそうなの?
なんでそんな眼で俺を見てるの?

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