◆Short Novels
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全寮制男子校の2年生篠田洋平。
間延びした喋り方、長い前髪に特徴的な眼鏡の為か、表情や考えが読み取りにくく、周りからは変わり者と思われている。
また、何を考えているか分からないとしても有名で、全ての行動の真意は不明とも言われている。
けれどその篠田にも評価されている面はある。
それは情報収集力だ。
どこから得ているのかが謎とされて、手段も情報網も謎。
けれど一つ明らかになっているのは、提供する側においてもされる側においてもそれに見合った対価を引き替えに交換されるという事。
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情報を引き換えに望まれる物は様々だ。
篠田の個人情報だったり、篠田が持っているある生徒の個人情報だったり……篠田の体だったり。
最近その中で多いのは、一番篠田が与えるに惜しくないと思っている、抱かれるという行為だ。
ーーーーー
「なんで…眼鏡外さねぇの?篠田」
「…ふっ……だって、外したら酷いから」
聞かれた質問に答えると、また奉仕を再開した。
根元までしっかりと銜え、舌を上下に動かし舐めて、愛撫を行う。
最初は嫌悪でしかなかったそれも、慣れればもはや何でもない。
まるで機械のように感情を取り除き行うだけだ。
「そう言われたら、気になる、な」
無意味な好奇心は捨てた方が賢明ではないですかねー。
頭上で声を途切れさせ、息を荒くし始めた情報提供者に無言で返しつつも、心の中ではいつものようにふざけた話し方で言葉を返した。
そもそも、返事を求めるような話題を今出すことが間違っていると思う。
「っ、篠田って、上手いん、だな……。意外だ」
それも、嘘ですねー。
多少なりとも噂を聞きつけてたから、報酬をこれにしたくせに。
本当、すぐ人間は嘘をつく生き物ですねー。
けれどそれに関しては決して、人のこと言えないけれど。
「ふっ、ん、……んっ、んぅ…」
早く達してくれと、篠田は手も使い相手を高めさせようとする。
舌で補えない所を手で上下に擦り、舌を這わせるのみでなく口をすぼめて吸ったりもする。
「っん、あっ……篠田っ……」
それに比例して髪を掴まれる力が強くなる。
その汚い手で触るな、と言いたくなるが雑念は捨てて自分の仕事だけに集中した。
早く、この身体を洗ってしまいたかった。
「あっ、はっ……も、イく……」
これは飲むべきかー?
何も言われてないから良いのかなー?
顔射好きじゃないけど、飲むよりはマシなんだよなー。
どうするべきか迷って、篠田は頭を一瞬後ろに退いた。
が、情報提供者に強く髪を掴まれて、それは叶わない。
「んんんっ」
うわ、最悪。ありえねぇ。
退く事が叶わなかった篠田は不本意ながら、吐き出された粘り気のあるそれを嚥下する羽目になった。
「あー、ごめんな、篠田」
「…………別に、良いですよ」
その話し方に悪びれた感じが一切含まれていない提供者を瞬間睨むも、すぐにそれは眼鏡のレンズの裏に隠した。
苛立ちをぶつけるのすら面倒で、意味の無い行動だと知っていたから。
「……教えて、貰えますよねー?珍しく今回は報酬の上乗せもさせてもらいましたしー」
手の甲で口を拭いながら尋ね、電話番号の書かれた紙を受け取る。
「……これは、確かですか?」
「当たり前だろ?俺の兄貴、結構仲良いらしいから」
「そうですか……では、確かに受け取りました」
篠田は何事も無かったかのように提供者に背中を向けて、貰った情報を無造作にポケットに忍ばせる。
「なぁ、篠田」
「………まだ何かー?」
呼び止められ、嫌々振り返る。
もう話す必要性を感じられない。
「斎藤先輩、何かしたのか?お前が調べるって事はそうなんだろ?あの人真面目だし、そうは思えないんだけど。確かこの学校のOBだろ?」
「…………OBでも、情報は情報ですよ」
「ふぅん、まあ別に俺には関係ないけどな」
「もう用が無いなら、これで失礼しますー」
声は、震えていなかっただろうか。
いつもの自分みたいに、出来ていただろうか。
部屋から出て無意識に零れたのは、大きな長い長い溜め息。
そして、細い一筋の涙。
「ごめんなさい、斎藤部長」
まだ俺、貴方にこんなにも縛られてるみたいです。
カメラを貰うだけじゃ足らず、貴方に繋がる情報を探してる。
でも自分は、昔斎藤が告白してくれた時の自分ではない。
情報収集力は変わらないかもしれない。
けれど確実に変わった、情報を扱うこの身体。
もう、充分に堕ちた。
「………せめて、貴方の記憶の中の俺だけは、昔のままで……」
もう二度と、会いませんように。
篠田は目を閉じて頭に昇る感情がスーッと引いていくのを感じながら、もう一度目を開いた。
いつもの篠田洋平に戻らなければ。
『お前が言うと嘘臭ぇな、洋平』
頭の奥で、声が微かに響いた―――気がした。
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