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◆Short Novels
13
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「ん、ぁ……い、奥っ………」

相手に合わせて腰を揺らす体力なんて残っていなかった。
ただもう、突かれるその速度や動きに合わせて枯れている声で喘ぐだけ。

四つん這いにされたまま行われる乱交に佐藤に対しての労いなんて一切無い。
固い地面に膝で立っているせいで膝は痛くて限界だ。
支える役目の手ももはや役割をなさず、目の前にいる柔道部に寄りかかる事でどうにか重たい体を支えていた。


「ほら、咥えろよ」
「んぐっ」


もう咥える事が何度目か分からない。
疲労と無遠慮に訪れる快感のせいで、すでに佐藤は抵抗する気を無くしていた。


「ん、ふっ、ぐっ……んんっ」


視界の端で佐藤を見下ろす眼鏡が見えた気がした。
こんな自分を見て何が楽しいのだろう。

もう、疲れた。
気持ち良い事に抗うなんて無意味だし、今更他人のモノを咥えて奉仕する事に躊躇う必要も無い。

だって、俺はもう汚れてる。
淫乱で壊れてる。
後はこのままどこまでも暗い底へ沈んで行くだけだ。

佐藤は、そっと瞳を閉じて今一度見える現実から意識を逸らした。



「何してるの?」



その時、堕ちていった真っ暗な闇から澄んだ水のような声が聞こえた。
その声は佐藤の淀んだ心に綺麗に波紋を残して徐々に広がっていく。


「あ、あ、あ……」


ここにいる訳がない。
だってそれは、探しに来たという事だ。
そんな事は有り得ない事だ。

だから、その声の主が、“彼”である筈がない。

けれど認める理性とは別に、本能が待ち続けていたその相手を全身全霊で求めていた。
震えた。
身体も心も何もかもが全て。

たったその一言で、佐藤は姿も見えない背後にいる相手の正体を把握した。



「は、はま…もと……」



枯れた声は、ちゃんと濱本に届いたのだろうか。
好きで好きで堪らない相手に、俺のこの声は届いたのだろうか。

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あきゅろす。
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