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◆Short Novels

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一度堕ちてしまえば楽なのだろう。
そんなの、周りから言われなくても分かっている。


「あ"ぁ、やっ、はっ」
「嫌そうな声……」


快感にはかなり弱い佐藤だけど、今だけは違った。
嫌で嫌で仕方がなくて、自分の身体も纏わりつく汗も結合された先にいる存在も何もかもに嫌悪と不快に満ちていた。
身体の奥を揺すられて得る快楽よりも負の感情が勝り、佐藤のモノは張り詰めずに下を向く。


「っ、抜、け……抜けぇ…っ」
「こらこら」
「ひんっ」


背中をのけぞり、腰を揺すって拒絶する。
けれど押さえ込まれ、同時に弱味も握られて佐藤は萎縮するが、それでも心は折れずに拒み続ける。


「っ、も……やだ、やだ……殺すっ」
「そんなに嫌なの……?」


緩やかに穏やかに動いていた眼鏡が動きを止めた。
腰を掴んだまま、奥まで挿入したまま動きを止めて、静かに口を開く。


「……何で佐藤はこんな目に遭ってると思うの?」
「…何で、って……」


そんなの、俺がお前らに短気のせいでキレて喧嘩を売ったからじゃないのか?
初めて聞かれた問いに佐藤は考える。


「……佐藤が考えてるのは、この2人だけね」


それはつまり、眼鏡は佐藤に対して喧嘩に対しての恨みを持っているわけでは無いという事。
なら、眼鏡は?
お前は、俺に何の恨みがある?
疑問が佐藤の中に生まれて、淀んでいる水が静かに流れていく。

金髪も柔道部も佐藤への愛撫を止めて眼鏡の言葉を静かに聞く。
その光景に、違和感を抱いた。

ずっと思っていた。
この2人と眼鏡の関係性や繋がりは何なのか。
立場の違いが三人の中では明確に示されているようだったから。

けれど、これではまるで、金髪と柔道部よりも眼鏡の方が立場が上みたいだ。


「……2人にこの方法を提案したのは俺なんだ」
「っ」
「濱本は良いよね……佐藤という相手を見つけられてさ」
「い"あ"っ」


全く油断していた所へ、急に強く深く奥を穿たれて佐藤は声を上げた。


「何か思い切り遊べる相手欲しかった……けど、佐藤は簡単に壊れそうにないね」
「っ!!」


その時感じたのは既視感。
なぜ最初、佐藤が眼鏡と目が合った時に一瞬でも濱本と重ねたのか。

単純な話だ。

眼鏡は、濱本とよく似ている。
外見じゃなく、中身が。
今だって、佐藤からは姿は見えないけれど、背後から感じる眼鏡の纏う雰囲気がよく似ている。


「簡単に壊れる相手はいらない……でも、佐藤は、大丈夫だよね?」
「っ、やだ……お前は、やだ」


似てるけど、眼鏡は濱本じゃない。
その簡単な部分で、身体が拒否してる。
壊れる以前の問題だ。

もう、正常ではない。
もう、壊れている。
今の状況がもはや異常で、異質で、有り得ない物で、壊れている。

佐藤からは見えない眼鏡の視線を背中に感じながら、言葉から拒んだ。


「俺は、濱本だから、良いんだ……お前は、違う!」
「…………その違う相手に犯されてるのに」
「っ!!」


ボソッと言われた言葉に佐藤は身体を堅くした。
同時に寒気もした。
言葉が図星だったという事だけでなく、まるで濱本に言われたようだったから。
濱本から責められているような気持ちになったから。


「……もう良いや、面倒くさい。だからもう、好きにする……」
「な、にを……する気だ」
「……乱交、かな」


三人居るんだから、と言った眼鏡の腰を掴んでいる手に、グッと力が入る。
ナカに入ってるモノがグンと存在感を増した。

佐藤の本能が、逃げたい、と訴えた。

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あきゅろす。
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