◆Short Novels
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「……どこだ、ここ」
佐藤が目を開けると、そこは暗く湿っている空間の寂れた空気の場所。
その場所に心当たりは無く、夕方とは言え余りにも陽が入らない部屋はどうにも居心地が悪い。
背中にはまだ気を失った際に殴られた痛みが残っていて、昨日から続く身体のだるさも未だ健在。
面倒な事になったのかもしれないなと、まるで他人事のように佐藤は後ろで縛られている両手を確認しながら思った。
「目覚めた?佐藤くん」
「……ここ、どこだよ」
部屋の奥から、靴の音を慣らしながら金髪ピアスがヘラヘラと笑いながら近寄って来た。
顔が確認出来る近さまで歩いてこられても場所と同じように顔にも心当たりはなく、拉致された理由は検討もつかない。
「さぁ?場所の提案したの俺じゃないし分かんないな。なー?」
佐藤の問いに対して金髪ピアスはクイッと顎で指した先には眼鏡がいた。
眼鏡は一見地味な為に金髪ピアスと系統が違うせいでこの2人が話すような間柄には想像出来ない。
「……どうせ場所聞いて分かっても逃げれないんだから聞く必要ないだろ」
「帰り道が分かんないじゃん?」
「そんなの知るかよ……」
佐藤とのやり取りにも眼鏡は動じる事なくヘラヘラしない代わりに冷たい雰囲気を出していて、ますます金髪ピアス達との関係性が分からなかった。
この眼鏡に喧嘩を売った記憶も買った記憶もないのでこんな目に遭う理由も分からなかった。
ただ、この学生達がなぜ佐藤をこういう目に遭わせて、この先どうするつもりなのかは悪い目的な事は分かった。
「お、起きたか?話なんか良いから、さっさと遊ぼうぜ。時間もったいねぇよ 」
「まぁ確かにな、せっかくの機会なんだ。たっぷり遊ばねぇとな」
「1人の時少ないからな…」
視界の先から新たに増えた柔道部の言葉に2人が賛成して、会話を勝手に進める。
「あんたら、何する気?」
「さぁ?なんだろねー」
「あんまりビビってないな、佐藤」
「面白くねぇな」
「リンチとかはしないから安心しなよ佐藤くん」
果たしてその情報が安心出来る材料になるのか。
この先どういう目に遭うのかという不安よりは、濱本に会えない悲しさが襲った。
不自由な身体に慣れないまま、佐藤は自分を見下ろす三人を鋭い眼で見上げた。
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