◆Short Novels 6 . 「あっ、はっ、濱本っ」 「お前は意外と中性的な顔してるからかな?見苦しいけど底辺ではないね」 「んんんっ!……ふぁっ…やぁ…っ」 ローターを白い肌に這わせながら、今更ながらにサンタのコスプレ姿をジッと見る。 赤い服に赤いスカート。白いファーで裾などを飾って、どこにでも売ってそうだ。 その服が売っている本来の意図は女子が男子に向かってするものなのだろうが。 「ねぇ佐藤、どうして欲しい?」 「あっ、ん……外し、て」 「どこを?」 「手……後ろの……」 てっきりモノの解放を頼むと思っていた。だがしかしその予想に反して佐藤が頼んだのは手の拘束の解放。 言われてその部分を見てみたら、ほんのりと赤い痕がついていた。 「……ねぇ、痛い?」 「んんっ」 人差し指で手首についている紐の痕をゆっくりと触って聞くと、首を横に振り佐藤はそれに答える。 「痛くない、けど……濱本に、触りたい……」 「何それ。俺が許すと思ってるの?」 「……っ、でも……やだ…から」 「精液出せないよりも、手を縛られてる方が嫌なの?」 「んっ、やだ……」 膝立ちをして濱本から与えられる快感に耐えながら頷き、佐藤は涙目で訴える。 その思考が全く理解出来なかった。 ―――けど、悪くはない。 「相変わらず、お前の思考は意味不明だよ」 「…っ、んぁっ」 持っていたローターで後孔の入り口を触れながら、濱本は続けて言う。 「でも、痕が残ってる事でどうでも良い無関係の人間から何か言われても嫌だしね……」 佐藤が自ら何か言うなんて事は有り得ない。言うとしたら、濱本にとっては心底どうでも良い学校の人間達だ。 佐藤の親については何も心配していない。それはもちろん認めているから、という意味ではない。 「…………外してあげるよ」 言うと濱本はローターを音が立てるくらい床に乱暴に置いて、佐藤の前から後ろへ手を伸ばし麻の紐で結ばれている拘束を外そうとした。それにより濱本の顔が佐藤の顔の横へと近づき、吐息が佐藤の首筋にかかる。 「ぁっ、はまもと……」 「勝手に感じるなよ、気持ち悪い」 「っん」 濱本の声が耳許で聞こえて身体をよじらせる佐藤に冷ややかに言い放ち、固く結ばれていた紐を簡単に解いた。 その間は終始無言で、部屋に聞こえるのは濱本の呼吸音と佐藤の堪え切れない洩れる声。 「……ほら、外してやったよ馬鹿」 「ぁ、はまもと、っ……」 手をだらんと力無くおろして佐藤は立ち上がった濱本を目を潤ませて見上げる。濱本は麻の紐をベッドの上に放り投げて、佐藤を見下ろす。 ―――この光景は、悪くない。 「ねぇ淫乱で変態なサンタさん、ご褒美欲しい?」 「ぁ、っ、うん!」 「許可無く立つなよ」 咄嗟に立ち上がろうとした佐藤を制するように濱本はスカートを押し上げている股間部を蹴った。 「あ"ぁぁっ」 「待てくらい出来ないの?犬以下だね」 「はっ…ごめ、なさいっ……」 涙目になりながら謝り正座する佐藤を見下ろしながら、ゆっくりとベッドに腰掛ける。足を組み直して、そして口を開いて告げた。 「…………来なよ、変態」 「っ!!」 小さな溜息の後に告げたのは、許可を示す言葉。 その言葉に反応したその姿は、まるで主人から餌を食べる事を許された犬のよう。 佐藤は素早く立ち上がり勢い良く抱きついた。その勢いからかかる重さに濱本は一瞬後ろによろめくが、倒れる事はどうにか免れる。 「重たい、抱きつくな」 「っ、欲し……濱本が、欲しい…」 熱のある佐藤の声。 熱い吐息が首筋にかかった。 「……気持ち悪い」 それに応じたのは、対照的な冷たい声だった。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |