◆Short Novels 「大丈夫だよ、お前なら」 友達から恋人に発展するって事よくあると思う。 ずっと片思いでずっと隠してたけど、ある事をきっかけに勇気出して告白してみたら、実は相手も自分の事が好きでハッピーエンドとか。 でもそれは、男女での話。 同性なんて有り得ない。だって、同性だもの。 男同士なんて、そんなハッピーエンドとは程遠い恋愛しかない。 そもそも恋愛にすら発展しない。 永遠に片思いで終了なんて、星の数ほどある話。 俺が、その良い例だ。 ーーーーー 「俺さ、大学受かった」 「へぇ良かったじゃん。県外だっけ?」 「うん、関西圏」 「第一志望だったよな、そこ。良かったな、受かって」 大学受かったって報告してきたのは、津野。 中高一貫の男子校で中学から知り合いの友達。同じクラスになったのは一回だけど、結構仲良い。 周りからは親友だって言われたりするけど、友達。親友じゃなくて、友達。 それ以上でもそれ以下でもない。ただの、友達。腐れ縁とかでもない。 そんな津野が大学合格の報告をしてきたのは、実際に合格発表があった日から一ヶ月経った今日。 しかも、高校を卒業して久しぶりに遊ぼうってなって、会って一時間してようやく。たぶん津野は、遊ぶ事にならなかったら報告してなかったと思う。 今日までに言う機会なんて幾らでもあっただろ。みんなケータイとかを持ってる時代なんだから。 そう思うけど、俺は津野に言わない。だって、津野はそういうの嫌いだし。急かされたりとか、他人にコントロールされるの嫌い。 今まで六年間ずっと、津野を尊重して生きてきた俺は、津野が嫌がる事は絶対しない。 「いつ引っ越すの?」 「一週間後かな」 「結構早いな」 「早く一人暮らししたいじゃん。さっさと家出たい」 「分かるわー、それ」 分かるよ、よく分かるよ、お前の気持ち。 俺もお前も家の境遇が似てるから、家が嫌いってのよく分かる。それに津野、受験の時に親と仲悪かったしな。険悪だったって言ってたしな。妹がかなりウザかったんだと。 でもさ、お前。 なら、俺と会うの今日で最後にするつもりだろ。 あと一週間の間に俺と遊ぶなんて有り得ないもんな。 あーあ、今日が最後とか最悪だ。 「お前は?どこだったっけ?」 「県内だよ。親が県外ダメだから」 「あー、そういや聞いたかも」 言ったよ俺は。俺は、お前と違って結果が出て二日後に珍しく自分からメールして報告した。 お前は言わなかったけどな?結果が出てたのに、お前は報告してくれなかったけどな? でもそんなの今さらだから、別に怒ったりとかしない。津野が俺の言った事を忘れるなんてよくある事だし。 そんな事いちいち気にしてたら、コイツと友達なんて絶対無理。 「でも俺さ、友達出来るか不安なんだよなー」 津野が言ったので俺は鼻で笑う。 よく言うよ。中学でも高校でも幅広く友達作ってたくせに。怖い顔した奴とか凄い地味な奴とか色々。 俺とは廊下ですれちがっても無視とかアイコンタクトとかしか、しないくせに。 他の奴にはスキンシップとか許すくせに。 「大丈夫だろ、津野なら。結構色んな奴に好かれやすいし。敵とか作らねぇタイプじゃん」 俺は違うけどな。俺は無意識に敵を作って嫌われたりするタイプ。 まあ、大抵そういう奴は俺も嫌いな事が多いから別に良いんだけどな。 「本当にそう思うか?」 「俺は嘘言わねぇよ」 「……一人とか嫌だよ、俺」 大丈夫だよ、お前なら。 どうせ俺の事なんか忘れるくらい、大学でたくさん友達作るだろ。 想像出来るわ、簡単に。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |