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◆Short Novels


「佐藤、何してんの?……って」


濱本がくされ縁で仲良い友人の後ろ姿を見かけて声をかけたら、振り返ったその友人の足下には人が転がっていた。


「あれー?濱本だー」
「……今度は何したの?」
「因縁つけられたから」
「だから?」
「思わず口と手が出ちゃった、みたいなー?」
「知り合い?」


濱本は、ケラケラ笑っている、見た目は至って普通の青年である佐藤の足下に転がってる人物を見る。しゃがみ込み様子を確認する。


「さぁ?知らねー」
「この制服、俺らと一緒だよ」


倒れている生徒はよく見たら同じ学校のようで、口許が切れて血は出ていたが整っている顔立ちをしていた。どうやって気を失わせたかは知らないけれど、佐藤には本当に困る。


「ふーん。どうでも良いや」
「問題になったらどうするの?」
「知らねー。濱本も一緒に責任取ってくれる?」
「嫌だよ。お前のその突発的な暴走を俺に責任押し付けるなよ」
「暴走じゃないよ。沸点が低いだけー」
「佐藤は我慢が足りないからね」
「濱本に対しては別だよ?」


佐藤はしゃがんでいる濱本の背中に縋りながら言うが、濱本はそれを無視して立ち上がる。


「顔、覚えられた?」
「さぁ?顔殴った後は腹ばっかだし?俺の顔見てないんじゃない?」


佐藤を濱本を見上げながら答える。

ここが幸い人気の少ないさびれた商店街で良かった。この気の毒な犠牲者である生徒も、他の人に対しても普通の顔立ちである佐藤の顔は覚えづらいだろうから。

中身は変わっているけれど、こういう時は外見は普通で良かったと思う。


「なら帰ろ」
「濱本も一緒?」
「仕方ないからね。変な輩にまた因縁つけられて佐藤がぶち切れないようにね」
「俺そんなに絡まれやすい?」
「そうだね。佐藤は絡まれた上でその相手に加減なく暴力ふるうのが駄目だね」
「濱本が一緒にいてくれたら大丈夫なんだけどなー」


歩きながら佐藤が濱本の腕に自らの腕を絡ませてくるが、それを全く気にした様子もなく濱本は歩き溜め息をついた。


「今でも充分だよ」
「けちだなー」
「はっ、冗談言わないでよ」


こんなに寛大な人間なんていないだろう。濱本は心の中でも笑いながら、佐藤の手を払いのける。


「人前だから止めてね」
「人前じゃなかったら良いの?」
「さぁ?どうだろうね」


それは佐藤がよくわかってるだろうに。


「今日、家行っても良い?」
「嫌だよ。今日はやりたい事があるんだ」


それは本当。でも佐藤はきっとそれでも来ると言うだろう。


「一人で大人しくしてるから」
「出来るなら良いよ。出来るならね」
「やった」


再び絡まる手を濱本は拒絶して、このおかしな友人を横目で盗み見た。何で自分は拾ったのだろうかと、あの日の自分の気まぐれに後悔した。

でも、その日に戻ってやり直したいとは今でも思わない。


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あきゅろす。
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