05
リヴァイはエレンの話を聞き、記憶の中に突っ掛かる物があった。そう言えば5年前、ある知人の頼みでこの街に来たとき、子狐にあったとリヴァイは思い出した。
しかし、子狐はあんなに成長が遅いものだろうか、リヴァイは頭を捻る。しかし、その考えも泡のように消えていった。何故なら。
「白狐か妖孤だな」
独り呟くリヴァイは鼻で暗がりに笑う。すると何処からか人影がうっすらリヴァイの前に映し出される。それは月の逆光で顔は見えないものの、暗がりになれたリヴァイにはハッキリとわかる。
「ハンジか…盗み見してたな?」
「バレちゃった?」
「お前ごとき見えない方が可笑しい。」
リヴァイはニヤリと口角をあげ、何やら楽しそうだ。
「ご機嫌だねぇ、さっきの子狐ちゃんと何かあったの?」
「ああ、アイツはただの狐じゃねぇって事だな」
「でしょーね、あんな神社の前をフラフラ出来るなんてよっぽどの妖怪じゃないと…私でも近付きたくないわ」
「人間のくせしてよく言う」
ハンジ、リヴァイの知人であり霊媒者、払い屋と言ったところだ。人間の癖にやたら妖怪に絡んではよくわからない実験を行ったり、調査をしている。
リヴァイもまた、そんなハンジの存在を目につけている。無駄に強い霊感と人間のくせして妖力がある奇妙な生き物である。
「前、俺が話した狐の話覚えているか?」
「前…何日前?」
「1825日くらい前だ」
「5年前ねw」
ハンジの質問の仕方にリヴァイはふざけか真剣かは解らないが、わざわざ沿って答える。人間の最近と妖怪の最近では日にち感覚が違い、最近じゃないとハンジは苦笑する。
「…確か、私が呼んだときだよね…あー、聞いた聞いた!確か遅れてきた理由だったね」
「俺がたまたま見たら居たんでな、何もしてねえガキを苛めるなんざ気に食わなかったかったからな。その時、確か帰り様に『また来る』みたいな事を俺が言ったらしくてな、ズット待ってるらしいんだ。」
「なるほどねー」
リヴァイは今さっき聞いてきたエレンの話をザックリ説明する。ハンジは楽しそうに笑っており何やら企んでそうだ。
「で、その子には言ったの?」
「言ってないが…言うべきなのか?」
「そりゃそうでしょ、名前まで教えた挙げ句しかも探してるんでしょ?リヴァイのこと」
「…白狐にか?」
「あー…」
白狐、騙すのがもっとも上手い妖怪として人間だけでなく、妖怪からも嫌われている。綺麗な容姿に化けたり、時には子供に化けたり性別を逆転して騙すものも多々いる。
だから、リヴァイは多かれ少なかれ警戒をしている。妖である自分はエレンが狐であることは解るが、本性まで気付ける力なんて持ち合わせてない。
それに仮にエレンが騙そうなら何が起きるかわからない。白狐とは嘘をついたりたぶらかすのが、仕事、いや生活だったりするやつもいる。見た目はああ少年のようだが、場合によっては面倒な女でもあったりする。
「白狐かあ…でもリヴァイを騙すんだったら普通女にばけるでしょ」
「…そんな簡単な手を使ってくるような奴らだったら俺はここまで頭を捻らない。」
「そうだね…また、みょーなのに好かれたもんだね」
「全くだ。」
月明かりは雲に隠れ、まるでリヴァイの心の曇りを現しているようだ。ハンジはため息をつくと「また明日行ってみれば?」といい、リヴァイに手をふり何処かへ消える。
「エレン…」
リヴァイはエレンの名をポツリと呟きまた、リヴァイもこの場から消える。
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