02
「エレン、まだ待つの?」
「ああ、約束したからな」
「…もう5年も経った」
「けど、何時か来るって言われたんだ。それに俺らの寿命で5年なんて大して騒ぐことじゃないだろ。」
「…」
家は川辺にある小さな小屋のような一軒家で、雪女のミカサと吸血鬼のアルミンと住んでいる。
「でも、もしその人が人間だったら5年ってそれなりの歳月になる。」
エレンは家に帰り、ソファでくつろぐミカサに「ただいま」と言うと、何をしてたのか聞かれ先程の会話を交わす。それにアルミンが割って入ったのだ。
「いや、それはない。今日鬼に会ったんだ。その人に雰囲気が似ていたから、多分その人も鬼だったと思うんだ。」
「…鬼?」
「そう。灰色の目で時々赤く光っていた。あの人もたしか赤い目だった筈なんだ。」
「じゃあ、エレンは鬼に助けらたってこと?」
「多分…」
鬼、人間は地獄の使者とか人を食べるとかって、よくいうけど別にそんな人を食べたりはしない。確かに地獄に住んでいるのはそうだけど、別に危害を加えたりはしない。
けど、妖にとっては厄介だったりする。気を損ねれば地獄に叩き落とされかねない。エレンは鳥居であったときすぐ頭を上げなかったのはそのためだ。
鬼に顔を覚えられたり、なおのこと名前を言うのは自殺行為になる。だが、何故か聞かれて答えてしまった。別に偽名でもよかったはずなのに。
「鬼にも変なやつがいるもんだな。」
アルミンが独り言のように呟く。それにエレンは頷き、同意する。
「…そうだな、あの時俺が払われたってどうせ行くのは地獄…なのにな。」
「でも、そいつが鬼だろと違っても助かったに変わりはないからいいんじゃない?」
「そうだよな。」
エレンはよくあの鳥居のある神社で遊んでいた。神主さんはとってもいい人で、狐である事を気にせず側に置いておいてくれた人だった。
また、ここにいる神様も穏和な方で健康祈願や安全祈願といった何処にでもいそうな方だった。そんな神社はエレンにとってとってもいやすかった。
エレンは昔、確かに他の狐と一緒にいた。しかし、いつの間にか1年、2年、5年たち気付いたら20年の歳月が経っていた。他の狐はそんなエレンを気味悪がり、何時しか一匹になってしまった。
そして人里に降り、始めて人と言う生き物や妖怪等の事を知った。それでもエレンの蝋燭の火は消えることがなく、また、10年20年と月日が過ぎていった。
人の言葉を覚え、化けかたを知り降るまいかたや生き方を覚え何時しか狐であることを忘れそうにもなった。
そんな時、エレンはアイツの存在を知った。特に厄介なのは払い屋。ところ構わず妖怪を払い、善悪ともとれない人間中心な生き物。一度すれ違った事くらいはあったが、その時は見付からずこの村には居られないと悟った。
それからエレンは町に出、都会と顔を出した。はじめはなかなかなれない暮らしも、時間が経てば慣れてくる。そして、妖怪たちの多さにもビックリした。
そこであったのがアルミンとミカサ。アルミンは路地で腹をすかせ倒れており、気の毒に思ったエレンが助けようとしたときアルミンがエレンに噛みつこうとして、助けてくれたのがミカサだった。
その後、彼らも最近下に降りてきたと言う話を聞き、一緒に生きていくと約束した。そして、川沿いの小屋のような家を借り、住んでいる。
そして、幾日かたちたまたま散歩をしていたエレンの目に入ってきたのがあの神社だった。真っ赤な多きな鳥居に目をとられたのだ。
むかし、住み着いていた山里も神社はあったが、こんな多きな鳥居を見るのは始めてでしばらくそこにいたのだ。
そうしていたら神主さんがエレンに話し掛けてき、よく遊びにくるようになった。
神主さんはお菓子をくれたり、狐姿のエレンを膝に乗せ、撫でてくれたり一日そこにいても飽きないくらいよく、相手をしてくれた。
しかし、流石に神主さんも人間であるため寿命と言うものに縛られている。アルミンから聞いたのだが、人間の寿命はせいぜい100年くらい。神主もまた、それくらいで逝ってしまった。
エレンは酷く落ち込んだが、神主さんがいなくなった後も神様が慰めてくれたり、いつも怖くて近付かないようにしていた狛犬たちも優しくしてくれた。
だけど、悲劇はこれで終わらなかった。
前の神主が死に、跡継ぎ問題が浮上する。そのときに跡継ぎになったのが神主の息子の息子。孫にあたる若僧が神主になったのだ。そいつがまた厄介で、霊感がふざけたほど強く、長年人間のふりをし続けたエレンの姿ですら見破り、追い払われたまではいいものの、ついに厄払い。
払い屋を雇ったのだ。案の定それを知るはずのないエレンは神社に近づいた。狛犬や神様がやけに静かだと思ったらもう、遅かった。
エレンは地面に這っていた術式に足を突っ込んでしまった。
[*前へ][次へ#]
無料HPエムペ!