01
「おい、なんでそんなとこに居るんだ?」
黒い髪の間に二本の角、長く鋭い爪と異様に伸びた二本の牙。たまに赤く光る目。人間とはかけ離れた様相の男が、鳥居の足元に座り込むエレンに話し掛ける。
「別に、貴方には関係無いでしょ。」
きっと周りの人間が見れば、話し掛けてきた男は人間に見えるだろう。しかし、同じ妖であるエレンには鬼であることは嫌でもわかる。
「確かに関係はねえが何日も居るからな…誰を待っている?」
「…約束したんです。」
「約束?」
「はい」
確かに何日もエレンは此処にいる。何日とも言わず何週間も。エレンは下げていた顔を上にあげる。その男は面白げに顔を見、「狐か」と呟いた。
「狐ならもっと意地汚い奴かと思ったが、約束を守るんだな。」
「勝手なみんなの思い違いですよ。」
エレンは男に酷いとでも言うような顔で男を見る。その目はクリクリとした黄色で、頭から天に向いて生えている白い狐耳。エレンも人間には隠しているがやはり、妖から見れば妖なのだ。
「気を付けろよ、此処等にはアイツらがやたらといるからな。」
「…はい。」
アイツら、きっと男が指すアイツらとは徐霊師や祓魔師、霊能力者を指すんだろう。確かに会うと厄介だ。
男はエレンにそう言うとさっき来た道を戻っていこうとする。が、ピタリと足を止める。エレンはどうしたのかと首を捻ると、男は少し此方に戻ってきた。
「そう言えば名前聞いてなかったな。」
「へえ?」
「名前だ。」
男はエレンの名を知りにきたらしく、体はあちらに向け、此方に顔だけ向けている状態だ。それが何故か絵になっている。
「エレン…です。」
エレンは自分の名前を口にすると、男は満足したように口角をあげる。口角をあげると長い牙がチラリと見え、不覚にもかっこいいと思ってしまう。
男はクルリと背を向け、また来た道を戻る。しかし、今度はその足をエレンが止めた。
「あ、貴方の名前は…」
片手を伸ばし、座っていた腰を上げ、待って欲しいと言ってしまう。名前を聞かれたら普通は相手の名前も気になってしまう。その考えにエレンは従った。
「…リヴァイ」
「リヴァイ…さん」
「ああ」
男、リヴァイは今度は人混みの中にかきけされ、見えなくなった。エレンは久し振りに会った妖にフワリと独りで笑う。そして上げた腰を元の鳥居の側に下ろす。
此処の神社は大きな方なのか、よく人が通る。たまにエレンを見るものはいるが、ただ此処に座ってる人間だとしか見られてないため、気にするとこはない。
そして、今日もまた約束した人は来なかったと落ち込むけどあの日以来一度も来ていなから仕方ないかとため息を溢す。そして、帰路に向かった。
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